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立法論としての相続法⑥ 遺留分制度の見直し

2017年7月3日

テーマ:相続判例法理

コラムカテゴリ:法律関連

コラムキーワード: 相続 手続き

法制審議会民法(相続関係)部会では、遺留分制度の見直しについても、議論がなされています。

1 現行遺留分制度の問題点
現行法の遺留分制度の問題は、次のところにある、とされています。

① 判例と法の規定の乖離
 例えば、民法1030条は、遺留分算定の基礎財産に含まれる贈与の範囲を、相続開始時の1年以内になされたものに限っているのに、判例は,受贈者が相続人である場合には,贈与について時期的な制限を設けないこととしている(最高裁平成10年3月24日判決)など、法の規定と判例の解釈が、一致しない部分があることです。
明文に反する解釈は、一般の人を迷わせますので、条文を判例に合わせる改正の要があるというもののようです。

② 寄与分ないし遺産形成に対する貢献度が全く考慮されていないこと。
 寄与分の認定は、家庭裁判所が、遺産分割の審判をするときの判断作業。遺留分減殺請求は、地方裁判所の判断作業だが、ここでは、寄与分を考慮する規定は存在しない。したがって、遺留分減殺請求事件で、寄与分が全く考慮されない。というのが判例の考えですが、これでは寄与分制度の趣旨に反する、というのが一般の考えです。
 寄与分を配慮した、遺留分減殺請求訴を認めるためにも、法改正をすべきだという意見がでてくるのは当然というべきです。

③ 相続に関する紛争を一回的に解決することができないこと
遺留分減殺請求をすると、減殺の対象となる財産は、遺留分減殺請求権者と受遺者・受贈者との共有になります。しかしながら、その共有関係を解消するには、別途、共有物分割の手続を執らねばなりません。
二度の法的手続を執らねば、権利の回復ができないのは、いかにも不便です。
これを一回の手続で解決できるようにするためにも、法改正が必要だという意見も、当然に意見だと思われます。

④ 遺留分制度の趣旨・目的が妥当する場面が減少していること(説明省略)

⑤ 事業承継の障害となり得ること(説明省略)
です。

2 問題点を生んだ原因
 法制審議会民法(相続関係)部会に提出された資料には、「遺留分に関する規定は,単独相続である家督相続制度を中心とした旧民法の規定に最小限度の修正を加えただけであったため,現行民法のとる共同相続制度において生ずる問題について十分な配慮がされていないとの指摘」があるとかかれています。
要は、遺留分制度は、木に竹を接いだような立法になったので、不備が生じているという指摘です。


3 見直し内容
 前記法制審議会の部会では、遺留分制度見直しの一として、①遺留分を侵害された者は,受遺者又は受贈者に対し,遺留分侵害額に相当する金銭の支払を求めることができることを基本に置いた考えが提案されています(詳細は省略)。

この記事を書いたプロ

菊池捷男

法律相談で悩み解決に導くプロ

菊池捷男(弁護士法人菊池綜合法律事務所)

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