マイベストプロ岡山

コラム

立法論としての相続法③ 配偶者の居住権の保護

2017年6月28日

テーマ:相続判例法理

コラムカテゴリ:法律関連

コラムキーワード: 相続 手続き

 法制審議会(相続関係部会)での審議の一つに、配偶者の居住権の保護を目的とした方策(改正相続法案)をどう定めるかがあります。その第2回会議では、次の事項が審議されました。

1 短期居住権の設定
①  配偶者は,相続開始の時に遺産に属する建物に居住していた場合には,遺産分割(協議,調停又は審判)が 終了するまでの間,引き続き無償でその建物を使用することができる。
② ①の権利(以下「短期居住権」という。)を取得したことによって得た利益については,配偶者が遺産分割において取得すべき財産の額(具体的相続分額)に含めない。
③ ①に規定する場合には,被相続人が遺言等(遺贈,死因贈与)でその死亡時に配偶者以外の者にその建物を取得させる旨を定めていたときであっても,配偶者は,一定期間(例えば1年間),無償でその建物を使用することができる。
④ 配偶者は,短期居住権を第三者に譲り渡し,又は①の建物を転貸することができない。
  ⑤ 短期居住権は,①又は③の存続期間の満了前であっても,配偶者が①の建物の占有を喪失し,又は配偶者が死亡した場合には消滅する。

2 長期居住権の設定
① 配偶者が相続開始の時に居住していた被相続人所有の建物を対象として,遺産分割終了後にも配偶者にその建物の使用を認めることを内容とする法定の権利(以下「長期居住権」という。)を新設し,配偶者は,遺産分割の協議又は審判等において,終身又は一定期間効力を有する長期居住権を取得することができるようにする。
② 配偶者が長期居住権を取得した場合には,配偶者はその財産的価値に相当する金額を相続したものと扱う。
③ 配偶者は,〔①の建物を占有しているとき又は長期居住権の登記を備えたときは,〕長期居住権を第三者に対抗することができる。
④ 配偶者は,所有者の承諾を得なければ,長期居住権を第三者に譲り渡し,又は①の建物を転貸することができない。
⑤ 長期居住権は,①の存続期間の満了前であっても,配偶者が死亡した場合には消滅する。
⑥ 被相続人は,遺言又は死因贈与によって,配偶者に長期居住権を取得させることができる。

 無論、これは試案段階のものですが、法務大臣からの諮問が、「高齢化社会の進展や家族の在り方に関する国民意識の変化等の社会情勢に鑑み,配偶者の死亡により残された他方配偶者の生活への配慮等の観点から,相続に関する規律を見直す必要があると思われるので,その要綱を示されたい。」というものですので、いずれ何らかの形で、相続を原因とする配偶者の居住権が立法化されることになるものと思われます。

この記事を書いたプロ

菊池捷男

法律相談で悩み解決に導くプロ

菊池捷男(弁護士法人菊池綜合法律事務所)

Share

関連するコラム

菊池捷男プロのコンテンツ

  1. マイベストプロ TOP
  2. マイベストプロ岡山
  3. 岡山の法律関連
  4. 岡山の遺産相続
  5. 菊池捷男
  6. コラム一覧
  7. 立法論としての相続法③ 配偶者の居住権の保護

© My Best Pro