従業員との間の競業避止契約は、代償措置がとられていないと、無効
囲碁の世界でも、AI(人工知能)が人間に勝った、というニュースには驚きましたが、考えてみますと、当然の結果のように思われます。
すなわち、囲碁とは、陣取り合戦であり、取った地の数で勝負を決する、実に単純なゲームという面を持つからです。囲碁の戦い(白と黒の戦いですので、「烏鷺の戦い」ともいわれます。)のルールは少なく、“石の生き死に”と“コウ(劫)”のルールのほか、規則めいたものはあまりありません。
それにもかかわわらず、囲碁に関しては、AIも通用しないだろうといわれたのは、読みの難しさがあるからです。黒石を持つ棋士と、白石を持つ棋士が、交互に石を打ち合うという単純な繰り返しの中で、それぞれの棋士は、盤面で最大の地を確保するため、石を打つべき最善の位置を探すのですが、その最善の位置を決めるまでには、何十手先まで読み抜く必要があり、その場合、長考といって、長時間考えることも希ではないようです。
しなしながら、人のする囲碁には、人智の壁があると思われます。人は、常に理論上の最善な位置を選び続ける、ということはできないと思われるからです。
その点、AIに、囲碁のルールを教え、理を教えれば、AIは、戦いの最中、いつの時点であっても、盤面で最大の地を確保するための次に打つべき位置を決めることができるはずですので、この能力には人が打ち勝つことはできないのではないかと思うのです。
AI囲碁が、プロ棋士を破ったニュースは、これからのAI時代を予兆するように思われます。
それは、AIには、理と理を生み出すだけのデータを与えれば、人の能力以上の能力を発揮して、先を“読み抜く能力”が備わることが実証されたからです
要は、人の経験は、理論には勝てない、ということかもしれません。
AIの持つこの能力は、与える情報の量と質によって、更に進化していくものと思われます。
今般の個人情報保護法は、ビッグデータの産業的な活用に道を開きましたが、ビッグデータの活用は、これからが本番だと思います。
追伸
なお、昨日、すなわち本年6月6日、公正取引委員会は、個人情報などビッグデータが特定の企業に独占されることを防ぐため、独禁法の運用に関する考え方を公表しました。
今後予想される、人工知能(AI)やIOT(Internet of Things)技術の更なる進化と普及が、ビッグデータを保有する企業に、競争上も優位な地位を与えることから、その弊害を生じさせなくするためです。
優越的地位にある会社が、安易に、取引先に対し、対価その他の見返りなくして、取引先が保有していている個人情報(匿名加工個人情報を含めて)を要求すると、それだけで、独禁法に抵触する可能性が生ずるのです。
今後の企業盛衰を左右するのが、ビッグデータの活用であるとすれば、会社は、それまで以上に、個人情報保護法や独禁法の知識を備えなければなりません。