ポレートガバナンス・コード改革が動き始めた② 代表取締役の解職をクーデターというのは、昔の話
東京地方裁判所平成28年12月19日判決は、会社が従業員との間で競業避止契約を結び、従業員から退職の申し出を受けた際も、競業避止契約を結んだ件で、
「労働者は,退職後において,職業選択又は営業の自由を有するところ,使用者が合意等により退職後の競業行為を無制限に制約することは許されず,使用者の利益確保の必要性,退職者の従前の地位,競業行為の制限の期間・範囲・態様,代償措置の有無・内容等の諸事情を総合考慮して,合理的な制限の範囲を超える場合には,当該合意等は公序良俗に反し無効になるものと解される。」との一般論を述べ,
「(会社には),・・・退職者に競業避止義務を負わせることにより,顧客や取引先,各種商品の仕様や製造単価などの内部情報の無断利用ないし流出を防ぎ,既存顧客を維持するなどの利益確保の必要性は認めることができる。」また,従業員らが,「会社において営業を担当していたことや、会社の規模や上記業界の特殊性も考えると,従業員らと顧客らとの間には強固な人的関係があり,従業員らが退職後に競業行為を行うことにより,原告に不利益が生じるおそれも大きいものとうかがえる。」ことは認められるが.
「しかし,他方,本件合意は,被告らに対し,退職後3年間という比較的長期にわたり,地域的な制限もなく,競合企業に雇用されたり,競合事業を起業したり,競業行為を行うこと,原告の顧客と交渉したり,受注することを広範囲に禁止するものであり,被告らの職業選択又は営業の自由に対する制約が大きいにもかかわらず,これに対する代替措置は何ら講じられていない。・・・(ので)、本件合意は,合理的な制限の範囲を超えるものであり,被告らの職業選択又は営業の自由を不当に侵害するものであるから,公序良俗に反し無効である。」と判示しました。
一般に、会社と従業員との間に結ばれる競業避止契約は、退職後の従業員の職業選択又は営業の自由を不当に侵害するものですので、期間と地域を必要最小限度のものとし、代償措置を講じなければ公序良俗に反し無効とされますので、注意が必要です。