継続的契約の一方的な解約は許されるか?
先日のコラムで、損害の発生後45年が経過して行使された損害賠償請求権が消滅時効にかかっていないとされた裁判例を紹介しましたが、損害が45年前に発生したのなら、その損害賠償請求権につき生ずる遅延損害金は、45年分請求できるかといいますと、そうではありません。
東京高等裁判所平成18年10月12日判決は,
①債務不履行に基づく損害賠償請求債務は、期限の定めのない債務であり、民法412条3項によりその債務者は債権者からの履行の請求を受けた時にはじめて遅滞に陥るものと解される(最高裁昭和55年12月18日判決・民集34巻7号888頁参照)。
② 本件についてみると、誤った新生児の引渡しにより債務不履行が生じ、それ以降控訴人らに債務不履行による損害が発生し拡大していったものと認められるが、その事実から、損害賠償債務の弁済期が誤った新生児の引渡しのころに定められたとか、あるいはそのころに弁済期が到来したとは認め難い(なお、前記のとおり、控訴人らの側では、血液型を知るまで損害賠償請求権を行使することが期待できなかったものであるが、他方、被控訴人も、誤った引渡しをし、その後真の子の引渡しを遅滞しているとはいえ、被控訴人はその事実に全く気づかなかったのであるから、損害賠償債務の履行期が引渡しのころに到来するとするのは、衡平上も妥当とは考えられない。)。
③ そして、控訴人らは、原審の準備書面によって債務不履行による損害賠償請求権の履行の請求をしたのであるから、被控訴人は、同準備書面の送達を受けた時から遅滞の責任を負い、同準備書面送達の日の翌日である平成17年4月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を支払うべきものと解される。
と判示しております。
なお、同判決が引用した判例(最高裁昭和55年12月18日判決)は、次のように判示しております。
債務不履行に基づく損害賠償債務は期限の定めのない債務であり、民法412条3項によりその債務者は債権者からの履行の請求を受けた時にはじめて遅滞に陥るものというべきである
参照
民法412条3項 債務の履行について確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来した時から遅滞の責任を負う。
2 債務の履行について不確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来したことを知った時から遅滞の責任を負う。
3 債務の履行について期限を定めなかったときは、債務者は、履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負う。