コラム
事業の譲渡1の補足 会社分割その他
2016年5月25日 公開 / 2016年5月27日更新
一つの会社の経営者が,二人の子甲及び乙に会社を承継させたい。少なくとも,甲に会社を承継させても,乙にも会社の取締役にして役員報酬を受け取らせたいなどの希望をかなえる方策
1 会社の分割
一つの会社を二つに分割し,一つを甲に,一つを乙に経営させることです。
2 定款による株主の属人的定め
非公開会社の場合,定款で定めれば、①配当、➁残余財産分配請求権、③議決権の3つについて、株主ごとに異なる取扱いができますので,これを利用する方法があります。
これは「定款による株主の属人的定め」といわれ,これを株式とみたてて「VIP株の発行」ともいわれています。
なお,注意すべき点ですが,乙を取締役の身分に置き,しかも一定の役員報酬を得させるという株主の属人的定めはできません。属人的定めは,①株主への配当。➁会社解散時の残余財産分配請求権,③議決権の行使についてだけです。
① 配当についていえば,例えば,株主乙については,議決権は行使できないが毎期一定額の配当をするという規定を設けるなどです。この場合,利益配当は配当できるだけの利益(分配可能額)がないとできませんので,当該事業年度で規定に定めた配当ができないときは,配当不足額は翌事業年度に支払うという規定(累積条項)も定めておくこともできます。
➁ 残余財産分配請求権で差をつける規定を置くこともできますが,これは会社解散の場合に効果が生ずるものですので,あまり実効的な規定とはいえません。
③ 議決権に関する属人的定めとしては、乙に1人の取締役を選任する議決権を与える規定を置くことが考えられます。これがあれば,乙は常に取締役であり続けることができます。
しかしながら,この属人的扱いは,取締役になれても常勤になれる保証はありません。これは取締役会の決議に任されることになるからです。
また,役員報酬は株主総会決議に従うことから,期待に反して報酬が十分に得られないという場合も生じます。
3 種類株式の発行
例えば,取得請求権付株式の発行
取得請求権付株式とは、株主が会社に対して,自己が保有する株式の買い取りを請求できる権利がついた株式のことです。定款を変更することで種類株式を発行することは可能です。
会社の経営権を握れない株主(乙)のために,会社から一定の金銭を支払わせて,経済的利益を得させようとする株式です。その権利を行使すると,株主ではなくなりますが。
関連するコラム
- 賢い事業承継の手順 1 自社の立ち位置と現在の株主の確認をすること 2016-07-09
- 議決権制限株式を活用する、親族間事業承継 2018-07-04
- 人も,後継者も,いつまでも,呉下の阿蒙にあらざるなり 2016-06-14
- 事業の承継8 後継者教育と教育者 2016-06-02
- 女性経営者 広岡浅子 2016-06-30
コラムのテーマ一覧
- 時々のメモ
- コーポレートガバナンス改革
- 企業法務の勘所
- 宅建業法
- 法令満作
- コラム50選
- コロナ禍と企業法務
- 菊池捷男のガバナー日記
- 令和時代の相続法
- 改正相続法の解説
- 相続(その他篇)
- 相続(遺言篇)
- 相続(相続税篇)
- 相続(相続放棄篇)
- 相続(遺産分割篇)
- 相続(遺留分篇)
- 会社法講義
- イラストによる相続法
- 菊池と後藤の会社法
- 会社関係法
- 相続判例法理
- 事業の承継
- 不動産法(売買編まとめ)
- 不動産法(賃貸借編)
- マンション
- 債権法改正と契約実務
- 諺にして学ぶ法
- その他
- 遺言執行者の権限の明確化
- 公用文用語
- 法令用語
- 危機管理
- 大切にしたいもの
- 歴史と偉人と言葉
- 契約書
- 民法雑学
- 民法と税法
- 商取引
- 地方行政
- 建築
- 労働
- 離婚
- 著作権
- 不動産
- 交通事故
- 相続相談
カテゴリから記事を探す
菊池捷男プロへの
お問い合わせ
マイベストプロを見た
と言うとスムーズです
勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。