9 手付解除はいつまでならできる?
最近,不動産売買契約書に,土壌汚染に関する規定が書かれているのを,数多く,見るようになりました。これは,土壌汚染の健康への被害が認識されるようになったことや,平成22年4月1日施行の改正土壌汚染法で,土地所有者の義務や権利が明確にされたことによるものと思われます。
そこで,この制度のことを,以下に,簡単に説明することにします。
土地所有者には、①土壌汚染の原因になるような施設を廃止した場合,➁3000㎡以上の土地の掘削などをする場合,それに③行政側からみて土壌汚染のおそれがあると判断される場合には,土壌汚染状況を調査し,都道府県知事に報告する義務が課されています(法3条1項、法4条2項及び法5条)。
それに伴い,土地所有者に,汚染の除去などの義務が生ずる場合もあります。
これらによる調査費用や汚染除去費用の負担は,土地の所有者が負担することになっています(法8条)ので,売買契約を結ぶ場合,万一にも,買主が取得した土地について,このような問題が生じたときの負担について,取り決めをしておく必要性が大きくなったのです。
なお、土壌汚染のある土地の所有者は、法14条に基づき、自主調査をして、都道府県知事に対し,要措置区域指定の申請をし、都道府県知事の監督下で、汚染除去をして、要措置区域の指定解除を受ける制度ができました。
これをした後で、土地を売買すれば、土壌汚染問題は回避されますので,土地によっては、売主がここまでするべき義務を、売買契約書条に明記する場合もあります。
一般に,売買契約には,
① 土地利用の履歴の調査・報告(閉鎖登記簿謄本、住宅地図、近隣住民からの聴取りなどよる)条項
② 要措置区域の指定の有無確認条項
③ (要措置区域の指定がないが、土壌汚染が予想される場合)売買契約後、指定の時期までに、土壌汚染に関する専門調査をし、場合に応じて、法14条の基づく措置をとる条項
④ 将来、土壌汚染状況調査や除去措置をとることになった場合の、費用は売主が負担するという条項
などが書かれることがあります。
なお,専門調査をした後での,売買契約では,その調査報告書は,土地所有権の一部をなすくらいの重要なものと考え,売主から買主へ,交付することも,契約事項として書いて置くべきでしょう。