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公用文の書き方 21 読書万冊,意,自ずから通ず

菊池捷男

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テーマ:公用文用語

 汗牛充棟(かんぎゅうじゅうとう)という言葉があります。牛が汗をかくほどの重さと,棟につかえるほどの量という意味から転じて,蔵書の多いこと,多くの蔵書を指す言葉です。この言葉は,日常聞くことはほどんどありません。今のまま,電子書籍が普及すれば,元の意味も理解されなくなるかもしれません。
 しかしながら,汗牛充棟を傍らにして,晴れれば,耕し,雨降れば,読書にいそしむ,というのは,一つの理想として語られた時代もあったのです。
 
 表題の「読書万冊,意,自ずから通ず」は,「読書百遍義自ずから見る(あらわる)」を,私が著作者に無断で翻案したものですが,古今東西を問わず,歴史に名を残した多くの人の人格形成に大きく貢献したのが読書といってよいでしょう。
 例えば,18世紀の歴史家エドワード・ギボンが著した「ローマ帝国衰亡史」などは,実に多くの人から読まれてきました。この本は、インドの初代首相ジャワハルラール・ネールが,名著「父が子に語る世界歴史」の中で、「流れるような旋律を持った文章を、どんな小説よりも夢中になって読んだ」と読後感を書き残した本であり、哲学者バートランド・ラッセルがいうところの「芸術としての史書」であり、英国首相ウイルストン・チャーチルが,ここから学びとった叙述法で「第二次世界大戦回顧録」を書きノーベル文学賞を受賞した、とされているほどの文章が書かれているのです。
 “本”は,人の叡智の結晶というべきものと思います。今,生きている人は,すでに歴史の彼方に消えた人であっても,読書を通じて,その叡智から学ぶことができ,また,その叡智の上に,自らの叡智を重ね,次の時代の人に伝えていくことができるのですから,“本”ほどすばらしい財産はないと思います。人類不滅の財産といってもよいと思うのです。

 その“本”を読むことは大切です。本を1万冊も読めば,その人の意思は,自ずと,他の人に伝えられる,というほどの文章を書くことができるのではないか,と思います。
 これが表題の「読書万冊,意,自ずから通ず」の意味です。

 

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菊池捷男(弁護士)

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