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 「宜しくお願い致します」という書き方は間違い

2016年1月19日 公開 / 2016年6月25日更新

テーマ:公用文用語

コラムカテゴリ:法律関連

 漢字と平仮名使い分けの法則,すなわち,「公用文における漢字使用等について」(平成22年11月30日付け内閣訓令)が教えるところに従えば,正しい書き方は,「よろしくお願いいたします。」です。
理由
1 「宜しく」について
 「宜」という漢字は,「常用漢字表」にはありますが,“読み”としては字音の「ギ」があるだけで,「よろしく」という字訓もなければ,挨拶言葉としての「よろしく」という意味もありません。
 公用文は,「常用漢字表」の搭載されていない漢字を使うことはできませんので,「宜しく」と書くことはできないのです。
 なお,「宜」という漢字の意味は,熟語として「適宜」「時宜」「便宜」「情宜」があることからも分かるように,「程よくかなっている。」という意味の語です。
 ですから,これに「よろしく」という字訓を与えるのは,間違いというべきです。
 これまで,「宜しく」と書いて「よろしく」と読んだのは,意味が似通っていることから,当て字として,慣習として使われたでものあり,学問的成果によるものではありませbん。

2 「致します」について
 「常用漢字表」には,「致」という語はあり,「いたす」という字訓もありますが,「致」という語は,動詞に「思いを致す」,熟語に「一致」があるように,「(心を)届ける。届かせる。」という意味の語です。
「お願い致します」と書いた場合,この語句の中の「致」には「致」という漢字固有の意味はありません。
あっても希薄で,本来の「致」という漢字の使い方ではありません。
 なお,,「公用文における漢字使用等について」は,次の語句は平仮名で書くことと定めていますが,これらはすべて補助動詞や補助形容詞です。
          ・・・かもしれない(間違いかもしれない。)
          ・・・てあげる(図書を貸してあげる。)
          ・・・ていく(負担が増えていく。)
          ・・・ていただく(報告していただく。)
          ・・・ておく(通知しておく。)
          ・・・てください(問題点を話してください。)
          ・・・てくる(寒くなってくる。)
          ・・・てしまう(書いてしまう。)
          ・・・てみる(見てみる。)
          ・・・てよい(連絡してよい。)
          ・・・にすぎない(調査だけにすぎない。)
「致します」はここには書かれていませんが,補助動詞です。
補助動詞を,漢字で書かないのは,漢字固有の意味が,働いていないからです。 
 ですから,「お願い致します。」と書くのは,これも当て字になった,間違った漢字の使用であり,正しくは「お願いいたします。」と書くことになるのです。

この記事を書いたプロ

菊池捷男

法律相談で悩み解決に導くプロ

菊池捷男(弁護士法人菊池綜合法律事務所)

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