建築 5 設計委託契約が結ばれていない場合でも設計料の請求ができる場合
東京地裁昭和60.7.16判決は、
付近住民による激しい反対運動のため、高層ビルの建築ができなかったため、施主が建築請負契約を解除せざるを得なかった事件で、建築会社には、高層ビルの建築を請け負った場合、付近住民から、反対運動が生じたときは、その仕事を完成するため第三者たる住民らの妨害ないし反対を処理解決するにつき施主に対し協力する義務があったのに、建築会社は、①施主の知らないところで住民に対し約束事をする。②住民からの免責書面を徴取する。③現場における反対運動を傍観する。④施主のために具体的助言をしなかった。⑤住民が求める日照図を提供しなかった。などの、不協力があったことを理由に、慰謝料として700万円を支払うことを命じました。
なお、この事件は、施主が700万円もの慰謝料を得た点だけを見ると、建設会社に一方的に責任があったように見えますが、施主は、高層ビルの建築失敗で、直接の経費負担だけでも1700万円以上を支払っていますので、その損失の一部が補てんされたにすぎません。
判決は、施主が負担した費用の一部を建設業者に負担させ、バランスをとったものと思われます。