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建築 12 クレームにより建築できない事態が予想できるときの説明義務

2013年2月8日

テーマ:建築

コラムカテゴリ:法律関連

1契約前の調査・解明・告知義務
大津地裁平成8.10.15判決は、
建設業を専門に営むものは、一般消費者を注文者として建物建築請負契約を締結する場合には、契約交渉の段階において、相手方が意思決定をするにつき重要な意義をもつ事実について、適切な調査、解明、告知・説明義務を負う、と判示し、次の事実関係の下では、義務違反があるとして損害賠償の支払を命じました。

2 事実経過
⑴ 団地の住人であった甲は、その住居を建築してくれた乙社の担当者に、両親と同居するため、①建て替え、②買換え、③増築の三案を検討することを依頼した。
⑵ それを受けて、乙社担当者は、①の建て替え案を提示した。
⑶ この当時、甲、乙社とも、同団地には、建物を建築する場合、隣地との境界より1.5m控えなければならないという建築協定のあることを知っていた。
⑷ 乙社が提示した建て替え案は、隣家との境界線から1.43m離れただけであったので、建築協定に違反するものであったが、甲と乙社とは、その案どおりの建て替え計画を実行に移すことにし、建築請負契約を締結し、旧建物を取り壊し、地鎮祭をしたところ、隣家の丙から乙社に対し、新建物の配置は丙との敷地の境界に寄りすぎており、建築協定に違反するので、配置を変更してほしいとの申入れを受けた。
⑸ その後、甲は丙と話し合いを進めたが、丙は、建築協定の遵守を求め、話し合いは決裂した。
⑹ その後、甲は、乙社の顧問弁護士から、新建物の建築を強行すれば、建築禁止の仮処分が出されると警告を受け、当初の建て替え案は実行不可能であることを知った。
⑺ その後、乙社は、甲に対し、建て替えの代替案を出したが、甲は、乙社に対し、その案では同居する予定の両親が楽しみにしている庭が狭くなるし、高速道路からの騒音が一層入ってくるため、こんな案ではなにも旧建物を取り壊す必要はなく、増改築で足りたと不満をぶちまけて、代替プランが検討の余地のないことを伝えるとともに、本件請負契約を解除した。
2裁判所の判断
旧建物を取り壊して新建物を建築しようとする場合、建築協定によるクレームが付いたとき、工事中止の危険性があるのであるから、乙社は、専門の建築請負業者として、おそくとも旧建物の取り壊しまでの間に、協定違反による新建物の建築工事に着工した場合には工事中止になる危険性があることを、甲に、告知ないし教示すべき義務があったのに、過失によりこれを怠った。その結果、甲は、旧建物を取り壊すという損害を受けたとして、その時価相当額770万円と慰謝料200万円合計970万円の支払を、乙社に、命じました。なお、甲も、建築協定のあることは知っていましたが、過失相殺はされませんでした。

この記事を書いたプロ

菊池捷男

法律相談で悩み解決に導くプロ

菊池捷男(弁護士法人菊池綜合法律事務所)

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