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コラム

企業経営と危機管理 5 データ改竄と成果主義

2012年11月29日

テーマ:危機管理

コラムカテゴリ:法律関連

平成12年東京都は公害防止条例を改正して、平成15年10月以降都内を走るディーゼル車には、排ガス中に含まれるPM(有害な粒子状物質)の60%以上を捕集する義務を課すことにした。これにより、産業界では、排ガス浄化措置に対する大きな需要の発生が見込まれることになり、総合商社の1つであるM物産は、既存の車両に取り付けるPM除去装置を開発することにした。そして、平成14年にそれを開発して、東京都より指定認定を受け、それ以後子会社から2万台以上の排ガス装置を販売し、200億円近い収益を挙げた。しかしながら、M物産が東京都より指定認定を受けたときの試験データは改竄されたものであった。これは平成16年にM物産の内部監査で判明した。
このデータ改竄事件の発覚によりM物産の信用は大きく失墜し、膨大な損害を蒙った(補償関連の費用のみで400億円以上かかった)。
M物産では、このデータ改竄事件の原因の1つに、M物産が従業員に対しとっていた成果主義(給与や賞与を成果により支給し、昇進も成果が大きく反映するという制度)があると考えたもようで、事件発覚後、成果主義を廃止したと報じられた。
この事件で、M物産はこれに関係した社員を懲戒免職にした。また、3名の元社員が起訴され詐欺罪で有罪判決を受けた。

なお、この事件は、前述のように、M社の内部監査で発覚した。これにより、データ改竄が会社ぐるみのものでなかったことは間違いはない。
しかしながら、そのM社の内部監査は、データを改竄したことのよる売上増という成果によって、高い給与・賞与を得た幹部社員が、自ら使う遊興費を取引先に負担させるなどの、社外との不明朗、不透明な関係についての噂の存在がきっかけになってなされたもので、調査の結果、幹部社員らには、数々の背任行為があったことも判明した。このような経済取引を利用した罪を犯す者は、罪は1つだけには止まらない。M社の日頃の監査の甘さも原因に数えられるべきかもしれない。

この記事を書いたプロ

菊池捷男

法律相談で悩み解決に導くプロ

菊池捷男(弁護士法人菊池綜合法律事務所)

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