相続税のお話し 7 代償分割に潜む落とし穴
Q 遺産分割協議の前に、長女の寄与分についてのみ、相続人の間で協議が成立した場合、その登記はできますか?
A できますが、実務上は、あまり例はありません。
1 寄与分は共同相続人の間の協議で決めることが出来る
民法904条の2は「共同相続人中に、・・・被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるときは、・・・共同相続人の協議で定めたその者の寄与分・・・」と規定しており、共同相続人の間の協議で寄与分を定めることができることが定められています。
2寄与分による相続分の修正を登記上反映させることは可能
寄与分を定めると、相続人の間の相続分は修正されます。修正された後の相続分は「具体的相続分」と言われますが、これを登記に反映させることは可能です。その登記手続は、次の2つがあります。
1つは、被相続人名義から、具体的相続分で、相続登記をすることです。
この場合の登記原因証明情報は、相続を証明する除籍謄本、戸籍謄本等のほか、寄与分が定められたことにより法定又は指定相続分と異なる相続分になったことを証明する書面(例:「共同相続人間の寄与分を定める協議書」)を提出することになります(印鑑証明書の添付は必要)。
2つ目は、法定相続分又は指定相続分でいったん登記をした後、具体的相続分が多くなった相続人を登記権利者とし、また、具体的相続分が少なくなった相続人を登記義務者として、双方の共同申請で、登記原因を「錯誤」として相続登記の更正登記手続をすることです。この場合も、「共同相続人間の寄与分を定める協議書」が必要になります。