民法と税法 低額譲渡の基準となる「時価の2分の1未満の価額」の射程範囲
財産的損害賠償金には、所得税がかかるものと、かからないものがあります。
1 所得税法
所得税法9条1項は非課税になる所得を列挙していますが、その17号に「損害賠償金で、心身に加えられた損害又は突発的な事故により資産に加えられた損害に基因して取得するもの」は非課税財産になると規定しています。
このうち前段の「心身に加えられたもの」が、精神的損害賠償金、つまり、慰謝料のことです。これはコラム「税金と慰謝料」で解説しました。
後段の「突発的な事故により資産に加えられた損害に基因して取得するもの」が財産的損害賠償金ですが、実は、この財産的損害賠償金がすべて非課税財産になるものではありません。
2 補償と損失の補填
財産的損害賠償金には、「補償金」と「損失の補填金」があります。
すなわち、損害賠償金が、補償金、つまり「所得に係る収入金額に代わる性質を有するもの」(所得税法施行令94条参照)であれば、それは収入と見られますので、経費を控除した後、所得があれば、所得税の対象になります。
しかし、そうでないもの、すなわち「損失の補填金」例えば、横領された金銭の賠償金を受けたような場合は、非課税の所得になります。
3 例外
所得税法施行令30条は、損害賠償金が、補償金、つまり「所得に係る収入金額に代わる性質を有するもの」であっても、「・・・心身に加えられた損害につき支払を受ける・・・損害賠償金(その損害に基因して勤務又は業務に従事することができなかつたことによる給与又は収益の補償として受けるものを含む。)」は非課税になると定めています。例えば、交通事故に遭って、休業損害金や逸失利益の支払いを受けた場合、本来なら、これに所得税がかかるはずですが、この規定により、非課税とされるのです。