間違えやすい法令用語11 解約・解除
1 「・・・の日から○日間」の意味
民事訴訟法285条は「控訴は、判決書・・・の送達を受けた日から2週間の不変期間内に提起しなければならない。」と規定し、控訴期間を定めています。
この場合の「判決書の送達を受けた日から2週間」とは、いつからいつまでをいうのでしょうか?
例えば、ある年の3月1日に判決書の送達を受けたとした場合で考えますと、この場合の2週間は、3月2日から15日までの2週間になるのです。
つまり、「判決の送達を受けた日から2週間」という場合の「2週間という期間」は、送達を受けた日を算入しないで、その翌日から2週間を数えることになるのです。
これは、民法140条が「日、週、月又は年によって期間を定めたときは、期間の初日は、算入しない。ただし、その期間が午前零時から始まるときは、この限りでない。」と規定しているからです。
このような扱いを「初日不算入の原則」といいますが、この民法140条のみならず、民法139条以下の、期間に関する諸規定は、民事法関係のみならず、公法関係にも適用されていますので、例えば、憲法54条の「衆議院が解散されたときは、解散の日から40日以内に、衆議院議員の総選挙を行・・・しなければならない。」との規定の「40日」も解散の日の翌日から数えることになるのです。
2 「・・・の日から起算して○日間」の意味
法律で期間を定めている場合の期間の数え方について、初日は算入しないという「初日不算入の原則」があることは、前述しましたが、民法139条は「期間の計算方法は、法令若しくは裁判上の命令に特別の定めがある場合又は法律行為に別段の定めがある場合を除き、この章の規定に従う。」と規定していますので、「法令若しくは裁判上の命令に特別の定めがある場合又は法律行為に別段の定めがある場合」は、初日不算入の原則の適用を受けないことになります。
その「別段の定め」の1つが「・・・の日から起算して○日間」という定めです。
例えば、憲法100条は「この憲法は、公布の日から起算して六箇月を経過した日から、これを施行する。」と規定していますが、ここに「起算して」という言葉が使われています。「起算して」という言葉はその日から期間が始まるという意味ですので、「初日を算入している」定めになるのです。
3 法令の施行日の定め方
法令の施行日を定める言葉として、例えば「平成○○年4月1日から施行する。」など確定日を定めその日から施行することを表す場合と、公布の日を基準に一定期間が経過した日から施行する旨を定める場合などがありますが、後者の場合の表現として「公布の日から○○日を経過した日から施行する。」という定め方はされていません。
その理由は、以下のとおりです。
すなわち、期間に関する通則である民法140条の本文は「日、週、月又は年によって期間を定めたときは、期間の初日は、算入しない。」と定め、初日不算入の原則を採用していますが、そのただし書きで「ただし、その期間が午前零時から始まるときは、この限りでない。」と規定していますので、「公布の日から○日間」と言う場合の「公布」が、通常はありえないことですが午前0時になされたときは、「公布の日から○日間」という場合は初日が算入されることになりますので、一般の人には、その法令の施行日が判然としないということが起こるのです。そこで、そのような疑義を招かないために、公布の日を含むことが明らかな表現つまり「公布の日から起算して○日間」という表現方法がとられているのです。