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小川芳夫

ファシリテーションの活用を支援するコンサルタント

小川芳夫(おがわよしお) / ファシリテーター

BTFコンサルティング

コラム

会社の会議:リアル会議とオンライン会議:今ファシリテーターと参加者に求められること

2020年11月9日 公開 / 2022年6月13日更新

テーマ:会議活性化

コラムカテゴリ:ビジネス

コラムキーワード: チームビルディング働き方改革業務効率化 手法

このコラムはビジネスパーソンの方々を対象として書いています。

このコラムでは、オンライン会議を含む会社の会議に必要な能力を考察します。

コロナ禍の中テレワークが増え、オンライン会議が増えました。会社でオンライン会議のファシリテーターやっておられる方の中には、なかなかうまく行かない、もっと上手にできるようになりたい、と思っている方々がいらっしゃいます。

このコラムでは、従来の会議室に集まるリアル会議とオンライン会議について、ファシリテーターと参加者の観点から何が求められるのか、について考察します。

このコラムは次の3つの章で構成します。10分程度で読める内容です。


私は、ファシリテーションを核としたコンサルティング・サービスを営んでいる個人事業主です。屋号を BTFコンサルティングといいます。BTF は Business Transformation with Facilitation の頭文字をとりました。トランスフォーマーという映画をご存知の方がいらっしゃると思います。クルマがロボットに変身したり、ロボットがクルマに変身したりする映画です。トランスフォーメーション(transformation)とは変身させることです。ビジネス・トランスフォーメーションとはビジネスを変身させてしまうことです。ビジネス変革とも言われています。「ファシリテーションを活用してビジネス変革を実現して欲しい、そのためのお手伝いをしたい」と考え、この屋号にしました。

ファシリテーション。Facilitationという名詞です。「人と人が議論し合意形成をする。この活動が容易にできるように支援し、うまく合意形成できるようにする。」これを実現するためにはどうしたら良いのかという課題を科学的に考え、試行錯誤を繰り返しながら作りあげられた手法、これがファシリテーションです。ファシリテーションをする人をファシリテーター (facilitator) と言います。


1. 会議室に集まるリアル会議

1.1. このコラムで扱う会議の定義

この章では、このコラムで扱う会議を定義します。情報伝達の場は外しましょう。

参加者全員で課題を議論し、打ち手を決め、さらに、誰が、何を、いつまでに、何の役割を持って、実施するのかを合意形成する。そして、今後どのように実施状況を追跡するのかを合意する。このコラムで言う会議とは、このような会議です。

上の段落を分解して説明します。

「参加者全員」

参加者の数名が議論して何かを決めるのではなく、参加者全員が議論に参加する、ということです。

「課題を議論する」

雑談から入らない。会議中に隣の人と会議に関係ないことを喋らない。議論すべきことを議論する、ということです。

「打ち手を決め」

会議の成果物として、代表的なものの1つにTo Doがあります。課題を議論し、課題を解決するためのTo Doを決める、ということです。

「誰が」

個々のTo Doについて、誰が担当するのかを個人名付きで決めます。グループ名やチーム名はいけません。役割や責任の所在が曖昧になってしまう危険性があるからです。

「何を」

個々のTo Doについて、何をするのかを、具体的に決めます。曖昧な表現は後々解釈の相違を生む危険性がありますので、具体的に決める必要があります。

「いつまでに」

期限です。「いつ頃」ではなく、日時を決めるべきです。

「何の役割を持って」

「誰が、何を、いつまでに」までは決めている方もいらっしゃると思います。役割も決めてください。
RACI(みんなで相談した後)
上図は、私のコラム『会社の会議:会議の変革:RACIを活用して実施可能なTo Doを合意しよう』から抜粋したものです。(画像のタップやクリックで拡大します)

RACI(レイシー)を説明すると長くなってしまいますので、このコラムでの説明は省きます。ご存知ない方は上記のコラムをお読みいただきたいと思います。RACI はシンプルで強力なフレームワークです。


1.2. 会議室で行われるムダムダ会議

会議室での対面の会議(ファシリテーターなし)
多くの会社では、図1のような会議をしていたのではないでしょうか。(画像はタップやクリックで拡大します)
会議室の椅子に座り、資料を紙に印刷して参加者に配り、話をするという形式です。図1のように言葉だけがやりとりされています。会議室には、プロジェクターやフリップチャートがあるのでしょうが、それらは使いません。

この形の会議が成立する条件は、コンテクストが高度に共有されていることです。

コンテクスト(context)とは、コミュニケーションの基盤である言語・共通の知識・体験・価値観・ロジック・嗜好性などのことです。

コンテクストの共有性が高いことをハイコンテクスト(High Context)と言います。
伝える努力やスキルがなくても、お互いに相手の意図を察しあうことで、なんとなく通じてしまう環境です。もし、その環境が整わないと、一転してコミュニケーションが滞ってしまいます。お互いに話の糸口も見つけられず、会話も弾まず、相手の言わんとしていることが掴めなくなってしまいます。

ハイコンテクストでは、コンテクストの共有が足りないと会話は成立しません。合意形成に無駄に時間がかかり、なかなか合意形成できないという状態になってしまいます。もしかすると、合意に至ることはできないかもしれません。

そもそも、共通の知識・体験・価値観・ロジックなどが高度に共有されることはあるのでしょうか。世代が離れていたりすると、コンテクストを共有することは困難だろう、と私は考えます。

このコラムでは、図1の形の会議を「ムダムダ会議」と呼ぶことにします。
何故か。

  • 時間が長い
  • 結論が出ない、物事が決まらない
  • 開催目的がはっきりしない
  • 自由に発言しにくい
  • 資料が分かりにくいなど準備が不十分

図1のような会議では、上記などの課題があることが多く、金銭的な観点不要な会議を数字で考える)からも、モチベーションなど従業員体験の観点不要な会議がもたらす悪影響を考える)からも、ムダがあります。

1.3. ファシリテーターが入り会議室で対面で議論する会議

図2は、会議にファシリテーターが入り、会議室で対面で会議をしている様子です。(画像はタップやクリックで拡大します)
会議室での対面の会議(ファシリテーターあり)
ホワイトボードの前に立っている人がファシリテーターです。ホワイトボードを見てください。ファシリテーターは、文字に加えて図表などビジュアルな表現を使って、議論を見える化しています。

コンテクストとは、コミュニケーションの基盤である言語・共通の知識・体験・価値観・ロジック・嗜好性などのことでした。

言語によりコミュニケーションを図ろうとすることをローコンテクスト(Low Context)といいます。コンテクストに頼った意思疎通が不得意とも言えます。ローコンテクストは、言語に対し高い価値と積極的な姿勢を示し、コミュニケーションに関する諸能力(論理的思考力、表現力、説明能力、説得力、交渉力)が重要視されます。

ファシリテーターは、参加者から意見やアイデアを引き出し、発言者に確認しながら、ホワイトボードに意見やアイデアを見える化します。この時大切なことは、他の人の意見やアイデアとの論点を合わせながら見える化することです。いわゆるアップル・トゥ・アップル(Apple to Apple)にしなくては議論にならないのです。同じリンゴについて議論していても、Aさんは外見の色艶の話をしていて、Bさんは味について語っていたりすると、論点が合っていないので、議論がピンボケでかみ合いません。

発言者は、特に当事者であればあるほど、他の人との論点合わせのことなど考えずに、自分の考えを主張することあります。これはとても良くあることです。そこで、ファシリテーターは複数の意見やアイデアの論点を合わせながら、ホワイトボードやフリップチャートに見える化します。このようにして、意見やアイデア同士をかみ合わせる事が可能になります。

リンゴの例で言うと、Aさんが外見の話をしているときに、Bさんが味の話をしたときに、ファシリテーターは、例えば、「外見に関する意見と味に関する意見が出ました。どちらもリンゴの魅力という観点では同じだと思います。最初の論点として、どちらについて議論しましょうか?」などと訊いたりします。いろいろな論点をごちゃ混ぜにして議論するのは良くありません。

図2はホワイトボードに議論を見える化しています。図3は議論の見える化が必要な理由を表現しています。(画像はタップやクリックで拡大します)
議論を見える化する理由
ヒトがコミュニケーションを始めたのは、約30,000年前だそうです。画像を使ってコミュニケーションし始めたそうです。一方、言葉を使ってコミュニケーションし始めたのは、約3,700年前だそうです。

約26,300年間は画像だけを使ってコミュニケーションしてきたのです。したがって、ヒトの脳は画像を処理することが得意で、頭脳の感覚神経の75%は視覚に使われているそうです。ですから、画像は言葉よりも記憶に残ります。「百聞は一見に如かず」というとおりです。


2. オンライン会議

2.1. オンラインで行われるムダムダ会議

オンライン会議(ファシリテーターなし)
図4は、オンライン会議で会議をしている様子を模式的に表したものです。(画像はタップやクリックで拡大します)
オフィスから参加している人と、自宅から参加している人がいます。

パソコンの画面には参加者の顔が映っています。この状態では、言葉だけがやりとりされています。もしかしたら、チャットを活用して文字でのやりとりをしているかもしれませんね。この形は、図1(ファシリテーターがいない言葉だけの対面の会議)とほぼ同じ「ムダムダ会議」です。

ただし、例えばプロジェクトのキックオフをオンラインでやる場合は、初めて会う人もいるでしょうし、顔を見ながらプロジェクトに参加する抱負や思いなどを語り自己紹介することには大きな意義があります。顔だけを見る会議を開催するなら、それにどんな意義があるのか、しっかりした理由を持つ事が大切です。

さて、オンライン会議が増え、チャットに意見やアイデアを書き込む人が増えました。
チャットは誰かが書き込むと、オレもワタシも、とドンドン書き込んでくる傾向があります。
1章でのリンゴの例のように、アップル・トゥ・アップルでない、論点のズレた話をしている、論点のズレた書き込みをしているようでは、何を話しているのか迷子状態になってしまう人が出てきてしまいます。ある論点に集中した議論は期待できません。


2.2. ファシリテーターが入りオンラインで議論する会議

図5はオンライン会議にファシリテーターが入った様子の模式図です。(画像はタップやクリックで拡大します)
オンライン会議(ファシリテーターあり)
図5は図2 に対応します。

コロナ禍になり、オンラインでの協働が注目されるようになりました。オンラインでの協働とは、「オンライン会議の参加者全員で議論を創る」という行為です。

オンラインでの協働を行うためには、それを可能にするITツールが必要です。

例えば、クラウド上のホワイトボードがあります。miroMURALGoogle JamboardMicrosoft Whiteboard などがあります。リアルな会議で会議室のホワイトボードやフリップチャートを使っていた方には、それらをITツールに置き換えたものなので、入りやすいものだろうと思います。例えば、ファシリテーターは各人が貼り付けた付箋に書かれた意見やアイデアについて、貼り付けた人に確認しながら、他の人の意見やアイデアとの論点を合わせる事が必要になります。

また、コロナ前から多くのビジネスパーソンに使われている、マイクロソフトのパワーポイントも複数の人と同時に協働作業を行うことができます。

Google スライドも複数の人と同時に協働作業を行うことができます。

ワークショップでは、3〜5人の人数で議論をすることがあります。パワーポイントやGoogle スライドは、このような場面で便利です。例えば、参加者を3つのチームに分割する場合を考えてみましょう。チーム1は7ページ、チーム2は8ページ、チーム3は9ページという具合に、各チーム専用のページを事前に用意しておき、そのページにチームのメンバーが書き込むことでワークを完成させるという協働作業を行うことが可能になります。


3. ファシリテーターと参加者に求められること

2.1節で書いた事です。チャットは誰かが書き込むと、オレもワタシもとドンドン書き込んできます。クラウド上のホワイトボードやパワーポイントやGoogle スライドも同じです。バラバラな論点からの意見やアイデアが書き込まれます。

コロナ禍の中、ウェビナー(ウェブ上のセミナー)に参加したことのある人は多いと思います。多くのウェビナーは、開催者の都合で、音声での発言を受け付けずにチャットのみを受け付けるようになっています。チャットがSNSのように雑多な論点の書き込みになっているウェビナーは多いと思っています。

会議参加者数が多い場合は、チャットに書き込まれる数が増える傾向があるように思います。
闊達に意見やアイデアが出されることは良いことです。

一方、ファシリテーターにも処理可能な量があります。ファシリテーターは、各人がクラウド上のホワイトボードに貼り付けられた意見やアイデアについて、貼り付けた人に確認しながら、他の人の意見やアイデアとの論点を合わせる事が必要です。もし、多くの意見やアイデアがバラバラな論点だとすると、ファシリテーターが論点合わせに費やす時間が増えるのです。結果、会議の時間が長くなってしまう危険性が増します。

また、何を書いているのか要点が曖昧な意見、ダラダラ長い意見なども、ファシリテーター泣かせです。これも、会議の時間を長引かせる原因となります。

ファシリテーターも参加者も変わる必要があります。新しい会議のスタイルに慣れる必要があります。

例えば、何を書いているのか要点が曖昧な意見ダラダラ長い意見。こんな人におススメのフレームワークがあります。PREPという、自分の考えを相手に分かりやすく伝えるものです。プレゼンテーションや説明で、論理的に説得力のある話の構成を考えるフレームワークです。
PREPは、Point(結論)、Reason(理由)、Example(具体例)、Point(結論)の4つの頭文字で、PREPの順に簡潔に話します。
例をあげます。

  • 結論(Point):生産性を高めるためにアプリでの電子マニュアルを導入すべき。
  • 理由(Reason):現状、紙媒体のマニュアルを使用しているが、メンテナンス不足による問題が起きている。また、作成および管理業務に人的コストがかかっている。
  • 具体例(Example):飲食店の調理マニュアルは毎月新しいメニューに更新する必要があり、作成、印刷、配布が面倒。アプリなら低コストで短時間に更新・配信可。
  • 結論(Point):電子データでマニュアルを管理できるのは便利。生産性を高めるためにアプリでの電子マニュアルを導入すべき。


また、会議中に論点がズレることは大いにあり得ます。先のリンゴの例で言うと、リンゴの外見と、リンゴの味。私の提案は次のようなものです。

クラウド上のホワイトボードに、パーキングロット(駐車場)の領域を作るのです。例えば、今はリンゴの外見について議論すべき時だとしましょう。そんな時は「リンゴの味について議論する」とパーキングロットに書き込みます。重要な論点なので忘れずに後で議論する、という意味です。そしてリンゴの外見について議論を進めます。
もちろん、参加者の合意を得てから、そのようにします。ファシリテーターが勝手にやってはいけません。


ファシリテーターは、フレームワークの使い方や、パーキングロットなどのツールなど、議論の進め方をよく知っています。参加者もある程度は議論の進め方を知っている事が必要だ、と私は考えます。参加者はファシリテーターが入る会議とはどう言うものなのかをよく分かっている必要があります。

このような考えから、私は会議参加者を対象とした研修を持っています。「何故ファシリテーションが必要なのか」、「ファシリテーターが入ると会議はどう変わるのか」ということを理解していただく内容です。

説明を聞いたり、研修に参加したらOKというものではありません。それだけでは不十分なのです。

実際にオンライン会議で体験する事が必要です。
加えて、ファシリテーターが入った会議に何回も参加する事が必須でしょう。実際の体験をとおしてファシリテーション文化が根付く、と私は考えます。それにより、会議リテラシーが上がってくると思います。
ここで言う会議リテラシーとは、平たく言うと、自由闊達に議論し、実施可能な合意形成をする事ができる能力です。


このコラムでは、オンライン会議における議論の見える化参加者全員で議論を創るという協働、そして論点を合わせることの大切さ、を中心に書いてきました。例えば、「今の話、アップル・トゥ・アップルになってないんじゃないかなぁ。◯◯と□□がごちゃ混ぜに議論されていると思う。」のような指摘が参加者から出てくるようになると良いですね。

また、ファシリテーターの方は、『組織力強化:スキルマトリックスとスキルレベル:スキルについて考える』に書いた、レベル4-上級か、レベル4に近いレベル3-中級(実務経験がある)である事が必須でしょう。オンライン会議のファシリテーション は、リアル会議のファシリテーションよりも難しいのです。

文字で書くと簡単なように読めてしまうかもしれません。実際は簡単ではありません。簡単なら、会議で悩むことはなくなりますよね。簡単ではないから、会議で悩む人が多いのです。

とはいえ、この課題を克服できたチームや組織のみが見ることのできる景色があることも事実です。是非、多くの方にそこを目標にしていただきたいと思っています。



最後までお読みいただきありがとうございました。 
 
 
 

この記事を書いたプロ

小川芳夫

ファシリテーションの活用を支援するコンサルタント

小川芳夫(BTFコンサルティング)

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