組織力強化:コロナによる組織の変化:ファシリテーションが果たす役割を考える
このコラムはビジネスパーソンの方々を対象として書いています。
コロナ禍を経験し、テレワークや、テレワークとオフィス出勤を合わせたハイブリッドな形での働き方が増えました。会議をする場合、全員がオフィスの会議室に集まって対面で会議をするという形は減ったと思います。
このような働く環境の変化を受け、オンライン会議は増え続け、働く人々の疲労や集中力低下を招き、生産性を落とすという事態が懸念されています。デジタル・オーバーロードという言葉を、国内外を問わず、見聞きするようになりました。
このコラムでは、このような環境の中で、withコロナの会議をどうするべきかを考えます。
まず、このコラムで言うところの「会議」を定義しておきます。
このコラムで扱う「会議」とは、下記3つの合意形成をすることとします。
- 参加者全員で、課題について議論し、打ち手(TO DO)を合意形成すること
- 各々のTO DOについて、誰が、何を、いつまでに、何の役割を持って、実施するのか、を合意形成すること
- 各々のTO DOについて、今後、どのように実施状況を追跡するのか、を合意形成すること
このコラムは次の3つの章で構成します。10分程度で読める量です。
私は、ファシリテーションを核としたコンサルティング・サービスを営んでいる個人事業主です。屋号を BTFコンサルティングといいます。BTF は Business Transformation with Facilitation の頭文字をとりました。トランスフォーマーという映画をご存知の方がいらっしゃると思います。クルマがロボットに変身したり、ロボットがクルマに変身したりする映画です。トランスフォーメーション(transformation)とは変身させることです。ビジネス・トランスフォーメーションとはビジネスを変身させてしまうことです。ビジネス変革とも言われています。「ファシリテーションを活用してビジネス変革を実現して欲しい、そのためのお手伝いをしたい」と考え、この屋号にしました。
ファシリテーション。Facilitationという名詞です。「人と人が議論し合意形成をする。この活動が容易にできるように支援し、うまく合意形成できるようにする。」これを実現するためにはどうしたら良いのかという課題を科学的に考え、試行錯誤を繰り返しながら作りあげられた手法、これがファシリテーションです。ファシリテーションをする人をファシリテーター(facilitator)と言います。
1. デジタル・オーバーロード(過負荷)を避けるための1つの方法
この章は、2022年4月17日の日本経済新聞の記事『名ばかりDX、逆効果 アナログ風土の見直し遅れ』を参照します。
マイクロソフト社の資料によると、マイクロソフトの「チームズ」の世界の利用状況などから、2020年3月の会議件数を100とすると、2022年2月は253に増加しているとのことです。2年で2.5倍。
カレンダーがオンライン会議でびっしり埋まっている方もいらっしゃることでしょう。そういう状況では、一定の連続した時間を確保して、集中して仕事をすることが困難になります。結果として、残業することになり、バーンアウト(燃え尽き)してしまう危険性もあります。
また、人間には休憩が必要です。5分10分の休憩を入れることで脳をリフレッシュすることができます。そうしないと、仕事の質や効率が落ちてしまいます。
このコラムの冒頭で、会議を定義しました。このコラムで扱う「会議」とは、下記3つの合意形成をすることとしました。
- 参加者全員で、課題について議論し、打ち手(TO DO)を合意形成すること
- 各々のTO DOについて、誰が、何を、いつまでに、何の役割を持って、実施するのか、を合意形成すること
- 各々のTO DOについて、今後、どのように実施状況を追跡するのか、を合意形成すること
会議での議論は、アイデアを出し合い、アイデアをかみ合わせ、合意を形成する行為です。
今一度考えるべきは、「この行為の質を上げ、効率よく、参加者の納得感のある合意を形成するためには、全員が同じ時間を共有して議論するしか方法はないのか」と問うことだ、と私は考えます。
会議室で、ブレイン・ストーミングを経験したことのある方は多いと思います。
その時はアイデアを出し切ったと思うものの、会議室を出てしばらく経った時に、あのアイデアはあまり良くなかったと思ったことはありますか?特にオンライン会議続きで、疲れてしまっているときには、良いアイデアは出にくくなります。
会議での議論。アイデアを出し合い、アイデアをかみ合わせ、合意を形成する行為を非同期コミュニケーションと同期コミュニケーションを組み合わせて、ハイブリッドなコミュニケーションで対応することを提案します。
非同期コミュニケーション
非同期コミュニケーションとは、コミュニケーションに参加する人が同時に連絡がつくようになっている必要はなく、それぞれが都合のよいタイミングで発信するコミュニケーション手段のことです。つまり、非同期メッセージを送るとき、すぐに返事が来ることは想定しません。代表例はメールです。
同期コミュニケーション
同期コミュニケーションとは、リアルタイムで行われるコミュニケーションのことです。たとえば、対面での会話、オンライン会議、対面での会議、オンラインチャットなどが考えられます。同期コミュニケーションでは、コミュニケーションをとっている相手がすぐに応答することが求められます。代表例は電話でしょう。
ハイブリッドなコミュニケーション
私は、非同期コミュニケーションと同期コミュニケーションを組み合わせて、ハイブリッドなコミュニケーションで対応することを提案します。
非同期コミュニケーションと同期コミュニケーションの長所と短所を洗い出してみましょう。目的は、それぞれの長所と短所を把握した上で、コミュニケーションの質を上げ、効率よく、参加者の納得感のある合意を形成するためのハイブリッドな組み合わせを考えていただくためです。
非同期コミュニケーションの長所
- 会議に費やす時間が減ることで、集中して仕事をするための時間が増えます。例えば、連続した時間を確保して集中して仕事に打ち込む時間を持つことができます。これは、ひっきりなしに思考が中断されるような状態では達成できないことです。
- すべてのコミュニケーションが記録されます。書面でのコミュニケーションであれ、録画した動画であれ、非同期コミュニケーションの長所の1つは、すべてが記録されることです。記録されたものはクラウドに保存されますので、コミュニケーションに参加するメンバーは簡単に記録情報を確認することができます。
- チームメンバーが自分の考えをまとめる時間を持つことができます。例えば、朝のジョギング中にアイデアを思いついたとしましょう。そして、昨日のアイデアと今朝のアイデアをかみ合わせて、アイデアを編集し洗練させることもできます。見直しの時間を持つことが可能になるので、不足している部分を補ったり、より明確な表現で最新情報を提供することが可能になります。
- より質の高い合意を形成できることが期待できます。チームメンバーに各々の時間を使って問題を解決する機会を与えることで、問題について考え、よりよい解決策を見出す時間を増やすことができます。
- 最も生産性の高い時間帯にチームメンバーが働けるようになります。チームメンバーの中には、午前中に最も仕事がはかどる人もいれば、午後の遅い時間帯に特に生産性が上がる人もいます。非同期コミュニケーションでは、チームメンバーが自分で仕事のスケジュールを決めることができ、生産性を高めることができます。
非同期コミュニケーションの短所
- 非同期コミュニケーションの最も明白なデメリットは、コミュニケーションがリアルタイムに行われないことです。会議の目的によっては、これが問題になることもありますので、長所と短所を考えて非同期コミュニケーションを活用する必要があります。
- 議論を始めてから合意が形成されるまでの時間が長くなります。ただその間に、集中が要求される仕事を入れたり、別の会議を入れたりできますので、この点を考慮する必要があります。
- 非同期コミュニケーションは、ITツールを活用する必要があります。ツールが使いにくかったり、ツールの数が多かったりすると、チームメンバーが情報を見つけ出し、よい仕事をすることが難しくなります。非同期コミュニケーションで活用するITツールを、誰もがアクセスできて使いこなせる協働のための情報源とすることが大切です。
同期コミュニケーションの長所
- 多くの人々にとって、慣れている議論の方法です。
- 問題をすぐに(例えば今から1時間以内)解決する必要があるという場合には、同期コミュニケーション一択になります。限られた時間の中で最も良い解決策を合意するためには、同期コミュニケーションが適しています。
- 難しいトピックに関するコミュニケーションや、建設的批判を共有する場合、同期コミュニケーションを利用することで、アイデアの意図を互いに確認したりすることで、誤解を防ぐことができます。
- チームワークを育むために、同期コミュニケーションは役立ちます。顔を合わせる時間を確保することは、効果的なチームワークを育むために必要なことです。可能であれば、週に1回は対面で同期コミュニケーションをするなどを検討することは大切なことです。
同期コミュニケーションの短所
- オンライン会議でカレンダーが埋まってしまうと、集中して仕事をする時間が取れません。オンライン会議自体が生産的なものであったとしても、会議後の個人的な生産性は下がってしまう危険性があります。
- 多くの人々にとって、慣れている会議の方法なので、議論の必要のない連絡会など、メールなど非同期コミュニケーションで十分なのに、会議を開催してしまうことがあります。会議を開催する際には、会議の目的を明確にして、会議を開催する必要があるのか否かを確認する必要があります。
- コミュニケーションが記録されていない場合、例えば議論が見える化されていない場合、合意されたはずのTO DOが忘れ去られてしまう危険性があります。
- 質の低い意思決定をしてしまう可能性があります。会議中にその場で決断しなければならないために、十分に検討・理解する前に、意思決定してしまうといったことが起こり得ます。
デジタル・オーバーロードを避けるために
デジタル・オーバーロード(過負荷)を避けるためには、非同期コミュニケーションと同期コミュニケーションの長所と短所を考慮して、脳に適度な休憩を与えつつ、効果的なコミュニケーション(議論プロセス)を設計する必要があります。
ところで、会議室での対面会議と比べて、オンライン会議ではどうしても言語に頼りがちになります。次章では、このあたりのことを説明し、最後の章で、デジタル・オーバーロード(過負荷)を避けるために、非同期コミュニケーションと同期コミュニケーションを組み合わせた議論プロセスの例を紹介します。
2. ハイコンテクストとローコンテクスト
この章では、ハイコンテクスト (High Context) とローコンテクスト (Low Context) について、書いてみようと思います。オンライン会議では、会議室での対面会議と比べて、顔の表情や仕草など非言語メッセージ量が少ないため、言語に頼りがちになります。ですから、言語により議論することが重要になりますので、この章ではその辺りのことを書くことにします。
では、言葉の説明から始めましょう。
コンテクスト(Context)
コミュニケーションの基盤である言語・共通の知識・体験・価値観・ロジック・嗜好性など
ハイコンテクスト(High Context)
コンテクストの共有性が高い。
伝える努力やスキルがなくても、お互いに相手の意図を察しあうことで、なんとなく通じてしまう環境。しかし、その環境が整わないと一転してコミュニケーションが滞ってしまう。お互いに話の糸口も見つけられず、会話も弾まず、相手の言わんとしていることが掴めなくなってしまう。
ローコンテクスト(Low Context)
言語によりコミュニケーションを図ろうとする。(見方を変えればコンテクストに頼った意思疎通が不得意とも言える) そのため、言語に対し高い価値と積極的な姿勢を示し、コミュニケーションに関する諸能力 (論理的思考力、表現力、説明能力、ディベート力、説得力、交渉力) が重要視される。
ローコンテクストなコミュニケーションの必要性
日本は、ハイコンテクストの文化だと言われています。上の説明「伝える努力やスキルがなくても、お互いに相手の意図を察しあうことで、なんとなく通じてしまう環境」とは、お互いの意図を察しあうことができないと議論ができない、という感じでしょうか。
雑誌ダイヤモンドのオンラインサイトに、『落ちぶれるハイコンテクスト人材、台頭するローコンテクスト人材』という記事が載っていました。
この記事の中から、私がハイライトしたい点は、
『日本は島国で人種的な多様性もないので、文化的には非常に入り組んだお約束ごとが幅広く共有されており、ハイコンテクストなコミュニケーションが多い』
ということです。
そもそも、このハイコンテクストとローコンテクストを論じたのは、エドワード・T・ホール (Edward Twitchell Hall, Jr.) という文化人類学者です。1950年代の研究らしいので、かなり昔の研究です。
下図のように分析したそうです。(下図の出所)
(画像のタップやクリックで拡大されます)
ところで、「日本人は全員同じ言語・共通の知識・体験・価値観・ロジック・嗜好性などを持っている」という命題を作ったら、これは正しいでしょうか?
同じコンテクストを持っている人もいるし、似たようなコンテクストを持っている人もいるし、異なるコンテクストを持った人もいるのではないでしょうか?そして、誰かが正しい、ということではないと思います。詩人金子みすゞが綴ったように「みんなちがって、みんないい」のだと思います。
私が思っていることが正しいと仮定すると、日本人同士であってもコンテクストが多様化していて、ローコンテクスト型のコミュニケーションが必要になってきていると思います。
さらに、グローバル化を志向している、あるいは将来国外のパートナー企業・組織と協業する可能性があるという場合は、ローコンテクスト型コミュニケーションに対応していくことが必須です。
お笑い芸人のパトリック・ハーランさんは、ログミーBizというサイトで、「ちょっと上と相談します」「持ち帰って検討します」というようなビジネスの現場でよく使われる明言しないお断りの文句は、アメリカ人には通じないと言っています。
コミュニケーションに関する能力(論理的思考力、表現力、説明能力、説得力、交渉力など)を強化する必要があると思います。
3. ファシリテーションを導入し、ファシリテーターが議論プロセスを設計する
このコラムの冒頭で、「人と人が議論し合意形成をする。この活動が容易にできるように支援し、うまく合意形成できるようにする。」ことがファシリテーションであり、それをする人がファシリテーターであると書きました。
このコラムで扱う会議は、下記3つの合意形成をすることでした。
- 参加者全員で、課題について議論し、打ち手(TO DO)を合意形成すること
- 各々のTO DOについて、誰が、何を、いつまでに、何の役割を持って、実施するのか、を合意形成すること
- 各々のTO DOについて、今後、どのように実施状況を追跡するのか、を合意形成すること
デジタル・オーバーロード(過負荷)を避け、上記の合意を形成するためには、どの場面では非同期コミュニケーションを活用し、どの場面では同期コミュニケーションを活用するのかを決める必要があります。このことを「議論プロセスを設計する」とも言います。これはファシリテーターが行うべきです。
具体的なイメージを持っていただくために、仮想の具体例を示しながら説明を進めたいと思います。
問題が発生し、迅速に解決することが求められました。少なくとも、1週間以内に何らかのアクションを開始しなくてはなりません。今日は月曜です。
問題の共通認識をチームメンバーで共有するために、月曜午前にオンライン会議を開催し、同期コミュニケーションで議論しながら、問題の共通認識をしました。
問題が共有された後は、解決すべき課題を洗い出す必要があります。課題の洗い出しをするために、月曜午後に1時間のオンライン会議を開催しました。オンライン会議は、時間切れになってしまいました。残りの課題の洗い出しは、非同期コミュニケーションで行い、翌日の火曜午後に再びオンライン会議で議論することになりました。つまり、残りの課題の洗い出しは宿題作業になるということです。
会議室での会議であれば、問題の共有や、課題の洗い出しはホワイトボードを活用すると思います。この仮想例に書いたようなハイブリッドな働き方のチームの場合は、miro などのクラウド上のホワイトボードを活用することになります。
課題の洗い出しは、クラウド上のホワイトボードに付箋を貼り付けることにしました。
火曜午後に再びオンライン会議で集まりました。オンライン会議の開始前に、張り付けられた付箋(洗い出された課題)を各自確認します。こうすることで、オンライン会議中に同期コミュニケーションで確認する時間が減ります。疑問点だけを同期コミュニケーションで確認すれば良いのです。
課題が洗い出されたことが確認できました、次に課題を解決するための打ち手を議論します。今回のオンライン会議は参加者のスケジュールの関係で30分の会議です。すべての打ち手を議論する時間は取れなかったので、再び、非同期コミュニケーションを活用して、打ち手を書いた付箋をクラウド上のホワイトボードに貼り付けます。そして、課題と打ち手を線で結び関係性を表現します。
翌日の水曜午後に再びオンライン会議を開催することになりました。
非同期コミュニケーションで出された打ち手を見ながら、オンライン会議で議論を進めます。今回も時間は30分しか取れませんでした。30分のオンライン会議中にすべての打ち手を精査することは、時間的に無理そうです。ファシリテーターは、オンライン会議中に、線で結ばれた課題と打ち手について参加者の共通認識を得ることを目標にしました。そして、非同期コミュニケーションで、各打ち手についてペイオフ・マトリックスというフレームワークを用いて整理することを参加者と合意しました。
下図はペイオフ・マトリックスとはどのようなものかを表したものです。
この仮想例の場合のペイオフ・マトリックスは、横軸に実現可能性、縦軸に問題解決への効果をとった4象限からなるものです。
横軸は、右側に行けば行くほど実現可能性が高いことを表し、左側に行けば行くほど実現可能性が低いことを表します。
縦軸は、上に行けば行くほど効果が高いことを表し、下に行けば行くほど効果が低いことを表します。
翌日の木曜午後はペイオフ・マトリックに貼られた付箋を全員で確認し、右上の象限を重点的に議論することにしました。この象限には、実現可能性が高く、効果が高い打ち手が貼られています。
今回は1時間取れましたので、1時間のオンライン会議でクラウド上のホワイトボードのペイオフ・マトリックスを見ながら、どの打ち手から始めるのか、詳細かつ具体的に合意することを目標に議論しました。今週中に始める打ち手を3つ選びました。担当者は、RACI(レイシー)というフレームワークを使って合意しました。
翌日の金曜午後にオンライン会議で、3つの打ち手について、担当者から具体的な進め方を説明してもらうことになりました。
担当者(RACIのR(Responsible)の役割の人)は、アドバイザー(RACIのC(Consulted)の役割の人)の助言を受けて、オンライン会議に向けて、具体的にどう打ち手を進めるのかを考えることになります。
金曜午後にオンライン会議が開かれました。各担当者から具体的な進め方の説明があり、Q&Aを経て若干の修正がかかり、進め方が合意されました。各担当者は、即打ち手の実施を開始することになりました。打ち手の実施状況はデイリーでクラウド上で共有することが合意されました。次の水曜午前に30分のオンライン会議を開催して、打ち手の進捗状況や問題の状況を振り返り、次のステップを議論することが合意されました。
上記のような議論プロセスを設計することは、ファシリテーターの仕事です。
1回の会議をファシリテートすることだけがファシリテーターの仕事ではありません。
コロナ前にはあまり意識する必要のなかった、非同期コミュニケーションと同期コミュニケーションの長所と短所を把握した上で、非同期と同期をうまく組み合わせた議論プロセスを設計することが求められます。
この章に書いたような議論プロセス、言い換えると合意形成のプロセスは、今までと異なるものになります。今までは、同期コミュニケーションだけを使った会議だったのですから。
ファシリテーターとして、新しい議論プロセスを導入したい場合は、部門長への提案と説得が必要になるかもしれません。部門長が新しい議論プロセスを導入することを同意したら、次は会議参加者への丁寧な説明です。参加者が、クラウド上のホワイトボードなどのITツールを活用した非同期コミュニケーションを使いこなせないと、この章で書いた議論プロセスを回すことはできません。ファシリテーターが中心となって、全員がITツールを使いこなせるようにすることが求められます。その上で、参加者が非同期コミュニケーションと同期コミュニケーションの長所と短所を理解し納得することは欠かせません。
新しいことを始めるので、最初から全てがうまくいくとは限りません。むしろ、うまくいかないことの方が多いでしょう。それでも、私はこのコラムに書いたようなアプローチを提案します。デジタル・オーバーロード(過負荷)を避け、より質の高い合意を形成するために。
最後までお読みいただきありがとうございました。