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小川芳夫

ファシリテーションの活用を支援するコンサルタント

小川芳夫(おがわよしお) / ファシリテーター

BTFコンサルティング

コラム

会社の会議:来るべき強者に備える:小中高生に学ぼう

2021年7月12日 公開 / 2022年10月11日更新

テーマ:会議活性化

コラムカテゴリ:ビジネス

コラムキーワード: 働き方改革チームビルディング生産性向上 取り組み

このコラムは、ビジネスパーソンの方々を対象に書いています。

コラムのタイトルの「強者」とは誰か?、なぜ「高校生に学ぼう」と言うのか?、疑問に思った方もいらっしゃるだろうと思います。

このコラムの「強者」とは、現在の小中高生です。世代で言うと、Z世代(1990年後半頃から2012年頃に生まれた世代)の後期の人たちです。彼ら・彼女らは会社の会議で使えるスキルを鍛えられて、会社に入って来ます。強力な道具を持って来ます。道具の使い方に精通した人たちです

不必要に不安を煽るつもりはありません。一方、あと数年後に入社してくる強者たちが何を学んで(鍛えられて)来るのかを知っておくことは、とても大切なことだと思います。

古いエピソードを持ち出しましょう。
私が初めて会社員になったのは40年くらい昔のことです。当時はパソコンが職場に入り始めた黎明期でした。集計作業は電卓が主流でした。パソコンを使って表計算ソフトを使って集計することは主流ではありませんでした。電卓派の人たちは、パソコンを毛嫌いしていたように記憶しています。「パソコンなんて使い方がわからないし、今まで慣れている電卓の方が使いやすくて早い」ということを主張していたように記憶しています。

今では(というか数十年前から)、上の段落のようなことは馬鹿げていると思われますが、当時はそんな感じだったのです。
今私たちは、電卓を使うよりも、表計算ソフトで集計した方が早いことを知っています。

昨日までと同じやり方では、彼ら・彼女ら強者と仕事ができないかもしれません。私たちは40年前の電卓派の人たちと同じ道を歩んではいけません。このコラムでは、このことをわかりやすく書いていこうと思います。

このコラムは次の3つの章で構成します。15分程度で読める量です。




私は、ファシリテーションを核としたコンサルティング・サービスを営んでいる個人事業主です。屋号を BTFコンサルティングといいます。BTF は Business Transformation with Facilitation の頭文字をとりました。トランスフォーマーという映画をご存知の方がいらっしゃると思います。クルマがロボットに変身したり、ロボットがクルマに変身したりする映画です。トランスフォーメーション(transformation)とは変身させることです。ビジネス・トランスフォーメーションとはビジネスを変身させてしまうことです。ビジネス変革とも言われています。「ファシリテーションを活用してビジネス変革を実現して欲しい、そのためのお手伝いをしたい」と考え、この屋号にしました。

ファシリテーション。Facilitation という名詞です。「人と人が議論し合意形成をする。この活動が容易にできるように支援し、うまく合意形成できるようにする。」これを実現するためにはどうしたら良いのかという課題を科学的に考え、試行錯誤を繰り返しながら作りあげられた手法、これがファシリテーションです。ファシリテーションをする人をファシリテーター(facilitator)と言います。


1. z世代後期以降の世代は何を学んで来るのか

小中高のお子さんがいる方は、2020年から新学習指導要領になったことをご存知かもしれませんね。

アクティブ・ラーニング

『2020年度、子供の学びが進化します!新しい学習指導要領、スタート!』 という2019年3月13日に出された政府広報があります。
『予測困難なこれからの時代。子供たちには自ら課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、自ら判断して行動し、よりよい社会や人生を切り拓いていく力が求められます。学校での学びを通じ、子供たちがそのような生きる力を育むために、学習指導要領が約10年ぶりに改訂され、2020年度より小学校から順に実施されます。』とあります。

変化の激しい予測困難な社会に必要な生きる力を育むこと、人生を自ら切り拓いていく力、そして何ができるようになるのかが大切だと言っています。


この新学習指導要領、小学校から英語が始まる、プログラミングが始まるというところがクローズアップされがちですが、大きな目玉はアクティブ・ラーニングです。
新学習指導要領で主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)」が重視され、児童生徒同士の対話型の活動を増やし、学ぶ過程を丁寧に解説する傾向が強まったそうです。

教師が一方的に授業をし、生徒は受け身で聞くだけ・・・というパッシブ(受動的)な学びではなく、生徒が自ら学ぼうとするアクティブ(能動的)な学び方に変わっていこうとしているのです。

具体例が朝日新聞の記事 『学びの過程、丁寧に解説 中学校教科書、検定結果公表』(2020年3月25日)に載っていましたので、抜粋します。
中学の公民、帝国書院の教科書です。

【議題】 赤字バス路線に税金を使うべきか?

【背景】
人口約10万人の◯◯市。山間部のC地区は過疎化が進み、バス会社は赤字路線の廃止を提案した。C地区の住民は市の税金を使ってでも路線を維持してほしいと望んでいる。

【課題】
赤字バス路線に税金を使うべきか、市長の立場にたって生徒同士でディスカッションをする。

【活動の狙い】
「効率」「公正」「対立」「合意」などを理解しながら、社会課題の解決策を考える。

【関連する資料】

  • 市の人口推移のグラフ
  • 市の歳出状況のグラフ
  • C地区のバス利用者数、売り上げや運行費用の表
  • 意見が対立する各地区の住民の声


【ディスカッションの注意点】

  • 根拠に基づいた主張をする
  • 相手の主張をむやみに否定しない


なんだか会社の会議にも出てきそうな内容ですね。

児童生徒の学びが変わるということは、教師の役割も変わります。
児童生徒がアクティブ・ラーニングするためには、教師がファシリテーターになるのでしょう。
どのようにアクティブ・ラーニングの場を設計し、アクティブ・ラーニングのプロセスを設計し、等々どう教師が生徒たちの「主体的・対話的な学び」を支援するのか、教師のスキルが問われることになると思います。


下の画像は生徒がアクティブラーニングしている様子です。出所はGoogle画像のクリエイティブ・コモンズライセンスです。海外のものですが、日本でも同じような感じになるのでしょう。生徒全員が黒板の方を向いて座っている形とは異なっています。
アクティブ・ラーニング

高校の論理国語

2022年度から高校の国語が変わります。

必修科目。
現行は「国語総合」です。
改定後は「現代の国語」と「言語文化」になるそうです。

選択科目。
現行は「国語表現」「現代文A」「現代文B」「古典A」と「古典B」です。
改定後は論理国語「文学国語」「国語表現」「古典探究」になるそうです。

平成30年に告示された 【国語編】高等学校学習指導要領 の冒頭から一部抜粋します。

『今の子供たちやこれから誕生する子供たちが、成人して社会で活躍する頃には、我が国は厳しい挑戦の時代を迎えていると予想される。生産年齢人口の減少、グローバル化の進展や絶え間ない技術革新等により、社会構造や雇用環境は大きく、また急速に変化しており、予測が困難な時代となっている。また、急激な少子高齢化が進む中で成熟社会を迎えた我が国にあっては、一人一人が持続可能な社会の担い手として、その多様性を原動力とし、質的な豊かさを伴った個人と社会の成長につながる新たな価値を生み出していくことが期待される。(中略)このような時代にあって、学校教育には、子供たちが様々な変化に積極的に向き合い、他者と協働して課題を解決していくことや、様々な情報を見極め、知識の概念的な理解を実現し、情報を再構成するなどして新たな価値につなげていくこと、複雑な状況変化の中で目的を再構築することができるようにすることが求められている』とあります。(黄色のマーカーは私がつけました)

さらに、論理国語に関する記述から一部を抜粋します。
グローバル化や情報化が進むこれからの社会においては、立場や考えの異なる他者との的確な意思疎通や共通理解課題を発見しその解決を導いていくための創造性や合理性を重視した他者との協働などがより重要になると考えられる。このような社会にあっては、示された情報の信頼性や妥当性を見極めながら、他者の主張や考えを的確に理解するとともに、自らの主張や考えについても、相手に受け入れられるよう、論拠に基づいて効果的に構築する資質・能力の育成が必要である。「論理国語」は、このことを踏まえ、新たに置いた選択科目である。共通必履修科目である「現代の国語」及び「言語文化」により育成された資質・能力を基盤とし、主として「思考力・判断力・表現力等」の創造的・論理的思考の側面の力を育成する科目として、実社会において必要となる、論理的に書いたり批判的に読んだりする資質・能力の育成を重視している。』(黄色のマーカーは私がつけました)

論理国語の目標は、言葉による見方・考え方を働かせ、言語活動を通して、国語で的確に理解し効果的に表現する資質・能力を育成することを目指すことだそうです。下記の3つをあげています。

  • 実社会に必要な国語の知識や技能を身に付けるようにする
  • 論理的、批判的に考える力を伸ばすとともに、創造的に考える力を養い、他者との関わりの中で伝え合う力を高め、自分の思いや考えを広げたり深めたりすることができるようにする
  • 言葉がもつ価値への認識を深めるとともに、生涯にわたって読書に親しみ自己を向上させ、我が国の言語文化の担い手としての自覚を深め、言葉を通して他者や社会に関わろうとする態度を養う



2. 現役のビジネスパーソンとの比較

1章で黄色のマーカーで強調した新指導要領が狙っていることを、今一度列挙してみます。
列挙する理由は「こんな能力を持った人たちが数年後から入社してくる」ということを理解していただきたいからです。

  • 自ら課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、自ら判断して行動し、よりよい社会や人生を切り拓いていく力を身につけている
  • 学ぶ過程を丁寧に説明することができる
  • 児童生徒がアクティブ・ラーニングするために、教師がファシリテーターになるので、ファシリテーションを活用した話し合いをたくさん体験している
  • 児童生徒同士の対話型の活動をたくさん体験している
  • 話し合いでは根拠に基づいた主張をすることができる
  • 話し合いでは相手の主張をむやみに否定しない
  • 立場や考えの異なる他者との的確な意思疎通や共通理解をすることが重要だと教えられている
  • 課題を発見しその解決を導いていくための創造性や合理性を重視した他者との協働が重要であると教えられている
  • 他者の主張や考えを的確に理解することができる
  • 自らの主張や考えを、相手に受け入れられるよう、論拠に基づいて効果的に構築する資質と能力を身につけている
  • 「思考力・判断力・表現力等」の創造的・論理的思考をする能力を身につけている
  • 実社会において必要となる、論理的に書いたり批判的に読んだりする資質・能力を身につけている
  • 示された情報の信頼性や妥当性を見極めることができる


いかがでしょう?
上記の能力を鍛えられた人たちが数年後から入社してくるのです。

私が書いたコラム『働き方:ジョブ型と成果主義に備える:スキルレベルを上げよう』では、2025年までに下記4つの能力を身につけ実務で使えるレベルまで研鑽することが求められると書きました。

  • 問題を分析し、課題を洗い出し、解決する能力
  • 自部門だけでなく、各部門から集まった専門家たちをチームビルディングし、チームで協働する能力
  • テクノロジーを活用する能力
  • チームとして、メンバーの自己管理能力(回復力、ストレス耐性、柔軟性)を向上させる能力


上記4つの能力の各々について、小中高校生が身につけてくる能力を対応させてみましょう。

問題を分析し、課題を洗い出し、解決する能力

児童生徒は、自ら課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、自ら判断して行動することを教えられ鍛えられて育ってきます。どのようにアプローチして解決に向かっていくのかを自分たちで考え、その過程を丁寧に説明することも鍛えられてきます

2020年コロナ禍になり、最初の緊急事態宣言が出た期間に、いわゆる指示待ち族の人たちが問題視されました。指示されたことを実直にこなすことだけでは立ち行かなくなりつつあります。

小中高生が鍛えられる思考力・判断力・表現力等」が必要だ、と私は考えています。ビジネスパーソンとしては、創造的論理的思考(ロジカル・シンキング)批判的思考(クリティカル・シンキング)をする能力を身につける必要があるでしょう。

クリティカル・シンキングは批判的思考という日本語に訳されることが多いです。これは誤解を生んでしまう危険性がある、と私は思います。本質は、何事も無批判に鵜呑みにしないで、自ら考えること、色メガネでみないこと、自らの思考の視点を変えて考えることです。複眼思考と言っても良いかもしれません。自ら考えることが重要なのです。

あなたは社会人となってから、ロジカル・シンキングやクリティカル・シンキングなどの思考法を学んだことはありますか?

研修に参加して、基礎的な知識を身につけたという方は多いと思います。書籍などの資料を読んだり視聴したりして、基礎的な知識を身につけたことがある、という方もいらっしゃるでしょう。大切なことは、その知識を実務に活かして研鑽することです。知識を実務に適用すると、うまくいかないことが必ず出てきます。その「うまくいかなかったこと」を振り返り、より良くするためにはどうしたら良いのかを考え、次回の機会に試す。このサイクル(学び)を繰り返すこうしたことをしながら、ご自身のスキルレベルを上げる努力をしていますか?

児童生徒は小中高の12年間継続して鍛えられるのです。このコラムのタイトルに「強者」という言葉を使った理由がこれです。

自部門だけでなく、各部門から集まった専門家たちをチームビルディングし、チームで協働する能力

各部門から集まった専門家たち(場合によっては今まで話したこともない人たち)をチームビルディングするためにはファシリテーションが役に立ちます。
部門が異なると組織文化が異なることがあります。特定のAさんとは馬が合わない、なども声に出さないまでも心の中では思っている方もいらっしゃるでしょう。チームビルディングは簡単ではありません。

児童生徒たちは、立場や考えの異なる他者との的確な意思疎通や共通理解をすることが重要だと教えられて育ってきます。他者の主張や考えを的確に理解することができるよう教育されてきます。他方、自らの主張や考えを、相手に受け入れられるよう、論拠に基づいて効果的に構築する資質と能力を身につけることも教育されてくるのです。

多様な人たちと、お互いを認めながら協働することを、単なるマインドだけを話すのではなく、日々の勉強の場で体験し続けることで「多様な人たちと協働することとはどのようなことなのか」を学んで来るのです。基本的な価値観が小さい時から学校での体験をとおして形成されることの意義は大きい、と私は考えています。

ファシリテーターが入る話し合いの場をたくさん体験しています。小学校低学年の児童たちは、最初からこの形です。あなたが小学生時代に体験した「学び」とは異なる形のものでしょう。このことは、とても大きなインパクトがある、と私は考えています。

コンテクスト(context)という言葉があります。
コンテクストとは、コミュニケーションの基盤である言語・共通の知識・体験・価値観・ロジック・嗜好性などのことです。

コンテクストの共有性が高いことをハイコンテクスト(High Context)と言います。
伝える努力やスキルがなくても、お互いに相手の意図を察しあうことで、なんとなく通じてしまう環境です。もし、その環境が整わないと、一転してコミュニケーションが滞ってしまいます。お互いに話の糸口も見つけられず、会話も弾まず、相手の言わんとしていることが掴めなくなってしまいます。

異なる組織文化にいる人、異なる知識を持つ人、異なる体験をした人、価値観が異なる人、ものの考え方が異なる人。こういった人たちとは、会話が成立しません。合意形成に無駄に時間がかかり、なかなか合意形成できないという状態になってしまいます。もしかすると、合意に至ることはできないかもしれません。

日本はハイコンテクストだと言われ続けてきました。
会議で他部門の人と議論していると、話している言葉は日本語なのだけど、何を言っているのか良くわからない、というご経験をお持ちの方もいらっしゃるのではないかと思います。

児童生徒たちが変えてくれそうです。

言語によりコミュニケーションを図ろうとすることをローコンテクスト(Low Context)といいます。コンテクストに頼った意思疎通が不得意とも言えます。ローコンテクストは、言語に対し高い価値と積極的な姿勢を示し、コミュニケーションに関する諸能力(論理的思考力、表現力、説明能力、説得力、交渉力)が重要視されます。

児童生徒たちは、上の段落で書いたコミュニケーションに関する諸能力(論理的思考力、表現力、説明能力、説得力、交渉力)を培ってきます

今小学校の低学年の児童は、12年間くらい繰り返し訓練されてきます。


キーポイントは、論理的思考力・表現力・説明能力・説得力・交渉力を身につけるときに、いわゆるコミュ力という曖昧なものは関係ない、ということです。論理的に考え、無批判に鵜呑みにしないで複眼的に考え、説得力を持って説明表現する。必ずしも言葉でなくても良いのです。文章で表現することもアリでしょう。画像や動画を使うこともアリでしょう。

下の画像をご覧ください。TRADITIONAL MEETINGとありますので、伝統的な会議という感じでしょうか。4人が会議室に集まって何かを話し合っているようです。文字や絵はありません。言葉だけがやりとりされています。伝統的な会議と言われるだけあって、この形の会議(伝統)を守っている会社は多いのではないでしょうか。
Traditional Meeting

伝える努力やスキルがなくても、コミュニケーションの基盤である言語・共通の知識・体験・価値観・ロジック・嗜好性などが同質なので、お互いに相手の意図を察しあうことができます。なんとなく通じてしまうのです。

次に、下の画像を見てください。VISUAL COLLABORATIONとありますので、ビジュアルな協働という感じでしょうか。4人はホワイトボードの前にいるようです。絵を描きながら議論しています。4人で議論して合意されたアイデアが形成されたようです。
Visual Collaboration

1章に載せたアクティブ・ラーニングの画像に似ています。
伝統的な会議では言葉だけがやりとりされています。一方、ビジュアルな協働では、言葉に加えて文字と画像が使われます。使えるものはなんでも活用しようというわけです。

ところで、人が互いにコミュニケーションし始めたのは約3万年前だそうです。言葉を使い始めたのは3700年前だそうです。つまり人類のコミュニケーションの歴史のほとんどの時代は言葉がなかった、ということです。言い換えると、ビジュアルな情報でコミュニケーションを取っていた時代がとても長かった、ということです。
(参照:Do Visuals Really Trump Text?

Allan Paivio という米国の心理学者の dual-coding theory という研究によれば、頭脳の感覚神経の75%は視覚に使われているそうです。
そして、画像は言葉よりも記憶に残るそうです。前の段落の人類のコミュニケーションの歴史を考えると、ヒトの脳がそのように進化しているということに頷けます。
3日後に覚えている確率は、文字と画像の場合は65%、文字のみの場合は10%だそうです。言葉のみはどうなのでしょう。書かれていなかったのでわかりません。多分よほどインパクトの強い言葉でなければ忘れ去られてしまうのでしょう。

これらの科学的知見から導き出されることは、画像というかビジュアルな表現をもっと会議に取り入れた方が良いだろうということです。
上の最初の伝統的な会議の画像のような会議。これは、とってももったいない会議である、と言って過言ではないでしょう。

下図は、コミュニケーションのトライアングルです。話し合いの場では言葉、文字、画像を適宜活用することが大切なのです。
コミュニケーションのトライアングル

なお、この章で貼った画像は下の50秒のYouTube動画から撮ったものです。


テクノロジーを活用する能力

児童生徒たちにはタブレット端末が配布されています。良い悪いは別にして、自宅からタブレット端末をオンラインでつないで学習することが可能です。

主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)をすることは、最初の数年は対面で行うことが主流だと思います。対面で、模造紙や付箋や数色のペンを使って協働することになると思います。

子供たちはデジタル機器に対して好奇心が旺盛ですし、強い好奇心ゆえ慣れるのが早いので、数年後にはオンラインでの協働をする場面が出てくるかもしれませんね。

今年も豪雨災害が発生しています。災害が出ていなくても、豪雨のときに登校するのは危険なので、自宅にいるべきです。今は自習モードになってしまうのかもしれませんが、オンラインの協働に慣れてくれば、そんな時こそ自宅からみんなと繋がって学習できるようにするべきだ、と私は思います。

もし、上記のようなことを当たり前に体験している人が入社してくる時代になったら、悪天候でも出社しろなどということは受け入れにくいのではないか、と思います。


チームとして、メンバーの自己管理能力(回復力、ストレス耐性、柔軟性)を向上させる能力

これは、コロナ禍でリモートワークになった人たちの、主にメンタル面での自己管理能力を言っている項目です。

対話型の協働をたくさん体験し、立場や考えの異なる他者との的確な意思疎通や共通理解をすることができるようになっていれば、有事が発生した時でもメンタル面での共通の課題を発見し、自分たちで解決に導いていくための協働ができるかもしれませんお互いを尊重し合いながら。

現行のビジネスパーソンの方々は、この辺りが弱いようです。ひとりになってはいけないのですが、リモートの環境で職場のチームとしてメンタル面のことに対応できるチームは残念ながら多くないようです。

2章の終わりに

2章では、ビジネスパーソンに求められている下記の4つについて、強者(児童生徒)と現役ビジネスパーソンを比較してみました。次章では、対策を考えます。

  • 問題を分析し、課題を洗い出し、解決する能力
  • 自部門だけでなく、各部門から集まった専門家たちをチームビルディングし、チームで協働する能力
  • テクノロジーを活用する能力
  • チームとして、メンバーの自己管理能力(回復力、ストレス耐性、柔軟性)を向上させる能力



3. 対策

この章では、下記の3つの観点で対策を考えます。

  • 組織長としての対策
  • 従業員としての対策
  • 教員の方々へのお願い



組織長としての対策

端的な提案は、ファシリテーションを活用することです。

具体的には、ファシリタティブなリーダーシップを持つ人を、ひとりでも多く育成することです。

ファシリタティブ (facilitative)とは、「物事の進行などを促進する」という意味の形容詞です。ファシリタティブなリーダーシップとは、ファシリテーションを中核に置きながら、チームに働きかけチームを目指す目標に到達するようリードするリーダーシップです。

DX(デジタル・トランスフォーメーション)という言葉を聞かない日はないほど、世の中に溢れています。
DXの本質はビジネス変革です。この考えの下、私はDXをデジタル技術を活用したビジネス変革という日本語に訳しています。

DXを実現するためには、ファシリタティブなリーダーシップが必要だ、と私は考えています。

全社規模のビジネス変革(DX)を実現するためには、営業、マーケティング、経営企画、業務、ITなど各部門の専門家を集め、アイデアや意見を引き出し、引き出されたアイデアや意見を紡ぎ合わせ、合意を形成することが必須です。社外の人に入ってもらう場面があるかもしれません。いわゆる共創です。

もし、今まで自組織内の改善活動を主に行っていたとすると、全社規模での協働は初めての経験かもしれません。チームとして機能するようチームビルディングが重要です。飲み会を開いてチームとしての結束力を高めよう、という昭和的なアプローチではなく、「そのチームで協働するという体験の価値」を各自が納得すること、その価値に魅力を感じられること、これが必須であると考えます。

各専門家が貢献していることを実感できることも大切です。その貢献に対して他の専門家から評価され感謝されることも大切です。ファシリタティブなリーダーシップで、そのような協働の場を作ることが、とても大切になります。

『様々な変化に積極的に向き合い、他者と協働して課題を解決していくことや、様々な情報を見極め、知識の概念的な理解を実現し、情報を再構成するなどして新たな価値につなげていくこと、複雑な状況変化の中で目的を再構築することができるようにすることが求められている。』

新学習指導要領が示している上の段落は、ビジネスパーソンにも求められていることである、と私は考えます。
組織力強化に必須なことだろうと考えるからです。

教育の場では、アクティブ・ラーニングということで、先生がファシリテーターとなり、児童生徒は対話しながらチームとして課題を解決します。ビジネスの場でも同じようなことが求められるのではないでしょうか。

なお、ファシリタティブなリーダーシップに関して、『組織力強化:コロナ禍のリーダーシップ:ファシリタティブなリーダーシップとは』でわかりやすく説明しています。

会議やワークショップなどの話し合いの場で、ファシリテーションを活用せず、2章で書いた伝統的な会議(TRADITIONAL MEETING)をし続ける組織であれば、新入社員は数ヶ月で会社を去っていく可能性があります。新入社員は強い違和感を感じ、自分がスキルアップできない組織だと考えるからです。


従業員としての対策

端的な提案は、下記の3つです。

  • ファシリテーターになる
  • ファシリタティブなリーダーシップを持つ
  • 自分で考える


ファシリテーターになるということは、新学習指導要領の先生のような役割をすることになります。

上の節の「組織長としての対策」に書いた、全社規模のビジネス変革を実現するために中心的な役割を担うことになります。
簡単な仕事ではないし、もがき苦しむ局面もあるかもしれません。それでも、やりがいのある今まさに求められる役割です。

ファシリタティブなリーダーシップに関しては、前の節に書きました。

自分で考える。
2章で書いたように、児童生徒は対話しながらチームとして考えることを鍛えられてきます。
ロジカル・シンキングやクリティカル・シンキングという名前を教えられるか否かはわかりませんが、2章で書いたとおり児童生徒はロジカル・シンキングやクリティカル・シンキングができるように鍛えられて入社してきます


先輩として、新人に仕事を教えられるように、あなたご自身をアップデートする必要がある、と私は考えます。


教員の方々へのお願い

私は、新学習指導要領が目指す、主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)に期待している者です。

期待している一方、教員の方々にとっても新しいことが入ってきてご苦労されていると思います。

既に、勉強会などをしておられると拝察します。
自分たちで勉強会というコミュニティを作って研鑽することは、とても大切なことだと思います。

加えて、既に実務でファシリテーションを活用しているところに行って、リアルなものを見ることも有効だと思います。百聞は一見に如かずですから。
例えば、既にファシリテーションを会議やワークショップに活用している企業は多くありますので、そうした企業の実際の会議やワークショップを見学して、Q&Aしてみることは、ご自身のためになるのではないかと思います。

ファシリテーションを活用する上で大切なマインドは、安心安全な場を作ることだ、と私は考えています。
どんな意見であっても受け入れられるべきです。発言した本当の意味を確認せずに否定するべきではありません。
大切なポイントは下記の3点です。ぜひ、この3点を大切にしていただきたいと私は願っています。

  • 否定されない安心安全で信頼できる場
  • 前向きな話し合い
  • 意見やアイデアを紡ぎ合わせて、ひとりでは思いつかない意見やアイデアを創出すること


なお、『会社の会議:会議における「安心安全な場」とは?:今理解したい3つの視点』というコラムで、安心安全な場について簡単に紹介しています。

私は、教員の方々に最大限のエールを贈らせていただきます。



最後までお読みいただき、ありがとうございました。
 
 
 

この記事を書いたプロ

小川芳夫

ファシリテーションの活用を支援するコンサルタント

小川芳夫(BTFコンサルティング)

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