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小川芳夫

ファシリテーションの活用を支援するコンサルタント

小川芳夫(おがわよしお) / ファシリテーター

BTFコンサルティング

コラム

会社の会議:会議リテラシーとは:昭和の会議リテラシーをアップデートしよう

2021年2月15日 公開 / 2021年11月5日更新

テーマ:会議活性化

コラムカテゴリ:ビジネス

コラムキーワード: 働き方改革チームビルディング業務効率化 手法

このコラムは、基本ビジネスパーソンの方々を対象に書いています。「基本」とつけた理由は、ビジネスパーソンでなくても参考にしていただけるかもしれない、と考えるからです。

このコラムのタイトルに「会議リテラシー」という言葉を使いました。
本文に入る前に、「会議リテラシー」という言葉を定義しておきます。

リテラシー(literacy)。
もともとは読み書きの識字能力という意味から使われ始めた言葉だと思います。今は、識字能力に加えて、特定の分野の技能、知識、能力という意味でも使われるようになりました。

このコラムでは、会議を実施する技能、知識、能力を「会議リテラシー」と定義します。

このコラムは次の3つの章で構成します。7分程度で読める内容です。


私は、ファシリテーションを核としたコンサルティング・サービスを営んでいる個人事業主です。屋号を BTFコンサルティングといいます。BTF は Business Transformation with Facilitation の頭文字をとりました。トランスフォーマーという映画をご存知の方がいらっしゃると思います。クルマがロボットに変身したり、ロボットがクルマに変身したりする映画です。トランスフォーメーション(transformation)とは変身させることです。ビジネス・トランスフォーメーションとはビジネスを変身させてしまうことです。ビジネス変革とも言われています。「ファシリテーションを活用してビジネス変革を実現して欲しい、そのために貢献したい」と考え、この屋号にしました。

ファシリテーション。Facilitationという名詞です。「人と人が議論し合意形成をする。この活動が容易にできるように支援し、うまく合意形成できるようにする。」これを実現するためにはどうしたら良いのかという課題を科学的に考え、試行錯誤を繰り返しながら作りあげられた手法、これがファシリテーションです。

ファシリテーションをする人をファシリテーター (facilitator) と言います。


1. 昭和の会議リテラシー

この章では、昭和の会議リテラシーを考えます。
昭和の時代の、会議を実施する技能、知識、能力はどのようなものだったかを考えてみます。

会議のやり方を教えられることはありません。先輩たちのやり方を見ながら、それを「正しいやり方」として見習いながら習得します。

会議というか議論というか、合意は会議室の外で形成されることが多いです。合意をまとめあげることは、交渉力があるとして評価されます。この交渉力があるとされている人が、キーパーソンだと思った人たち(いわゆるヒラメ社員であることも多い)を集め、合意が作られます。忖度されます。

会議室での会議が開かれる時には、既にほぼほぼ合意が形成されています。参加者の中の立場が上の人たちの間では事前にネゴられてた結論が合意されているのです。会議はどうでもいい雑談から始まります。そのうち議題が示され、形だけの議論をします。立場が上の人に反対意見を言うことは許されない空気が会議室に漂っています。事前にネゴられた会議のシナリオから外れそうな発言をしそうになると、睨まれるなどの非言語メッセージや直接的な言葉を使って、発言は否定されます。

会議の終了時刻が近づくと、予め用意された結論を参加者が形式的に合意します。


2. 昭和の会議リテラシーの課題

1章では少し誇張してヒドい会議リテラシーを書いてみました。平成の時代も1章のような会議リテラシーの会社があったかもしれませんね。
この章では1章で書いたことを見ながら何がマズいのかを考えます。別の言い方で言うと、何故令和の今になっても昭和の会議リテラシーを使い続けるのはマズいのかを考えます。もっと良い会議とするための課題を見つけていきます。

会議のやり方を教えられたことがない

私はセミナーなどの場で、会議のやり方について参加者の方からお話を伺うことがあります。
会社に入社後、会議のやり方を教わったことのない方が多くいらっしゃいます。

一方「会議をうまくやるにはどうしたら良いのか」という研究はなされていて、その例がファシリテーションやアクティブラーニングだったりします。

良いものがあるのに使わない、使おうとしないというのが課題です。
ファシリテーションとアクティブラーニングについては3章で説明します。

議論は会議室の外でヒラメ社員の間で行われる

よく言われているのが、タバコ部屋で議論して合意を形成してしまう、というやり方です。

はびこっている考え方は、皆が同じ考えでいることです。異なる考えを受け入れたくないという考えです。
下図は、『組織力強化:迅速に組織変革する9つの方法:ファシリテーターの観点で考察する』で紹介した官僚組織の獣です。
官僚組織の獣
官僚組織の獣とは、簡潔な報告をし合い、承認を請い、非生産的な会議の席に座っているような人たちからなる獣のことだそうです。そして、会議終了後に、不安や恐れなどから寄り集まり、本当の会話を始めるような獣だ、とも書かれています。
因みに、上図の出所はイギリスの "Institute of Development Studies"というサイトです。日本以外にもそういう人たちはいます。

昭和、特に高度経済成長期の時は、作れば売れるような時代でしたから、皆が同じ考えで合意された結論でもビジネスできたのでしょう。

今は違います。複雑で不確実で予測困難な時代です。
素晴らしいアイデアを思いつく天才的な人がいる会社は、その人の考えでも良いかもしれません。例えば、アップルのスティーブ・ジョブズです。
そんな人がいない多くの会社は、より良い結論に到達するためには、多様な意見を引き出して、議論し、多様な意見をかみ合わせて、自分たちにとって一番良さそうな結論を合意する必要がある、と私は考えます。

ですから、ヒラメ社員たちだけで一様な考えだけで議論してはマズいのです。
一様な考えでは多様な意見が出ることは期待できないでしょうから、そもそも会議を開催する必要はないかもしれません。課題です。

ところで、私たちは、ジェンダー(gender)だけでなく多様性・ダイバーシティ(diversity)やインクルージョン(inclusion)が言われている時代に生きています。そもそも英語なので世界中で。この背景にあるものは、ジェンダーや多様性・ダイバーシティやインクルージョンが、まだまだ実現されていないからだ、と私は思っています。実現されていないから、よく耳にするのだろうと思っています。「そういうば、ジェンダーとか多様性・ダイバーシティとかインクルージョンって言われていた時代があったよね。今では当たり前になったからあまり聞かなくなったけど。」みたいな時代が訪れて欲しいものだ、と私は考えています。

結論をまとめあげることは交渉力があるという考え

この考えの裏にはクローズな世界があると思います。議論はオープンになされるべきです。
さらに言うと、結論をまとめあげるのは、会議参加者の役割です。ファシリテーターの支援を受けながら。
勘違いしている感じがありますね。ここがマズいのです。課題です。
交渉力があるのなら、その能力は別のところで発揮すべきです。

会議室の会議は形式的なもの

形式的な会議なんてやる必要がありません。不要です。
この考え方は課題です。

不要な会議は悪影響をもたらします。不要な会議がもたらす悪影響を考える不要な会議を数字で考える の2つのコラムで考察しています。

反対意見を言うことを許さない空気

自分たちの意見によほど自信があるのかもしれませんね。その自信はどこから来るのでしょう。

反対意見を恐れているからなのではないか、と私は考えます。
昭和の会議リテラシーの底流にあるものは、ハイコンテクストな世界である、と私は考えています。

コンテクスト(context)とは、コミュニケーションの基盤である言語・共通の知識・体験・価値観・ロジック・嗜好性などのことです。

コンテクストの共有性が高いことをハイコンテクスト(High Context)と言います。
伝える努力やスキルがなくても、お互いに相手の意図を察しあうことで、なんとなく通じてしまう環境です。もし、その環境が整わないと、一転してコミュニケーションが滞ってしまいます。お互いに話の糸口も見つけられず、会話も弾まず、相手の言わんとしていることが掴めなくなってしまいます。


ハイコンテクストでは、コンテクストの共有が足りないと会話は成立しません。コンテクストを異にする反対意見を出されると、話ができなくなってしまいます。ですから、反対意見は怖いのです。

多様な意見を引き出して議論しなければ、複雑で不確実で予測困難な時代の会議は立ち行きません。
解決しなければならない課題です。



3. 令和の会議リテラシーはどうあるべきか

冒頭で会議リテラシーという言葉を定義し、1章では昭和の会議リテラシーを考えました。2章では、昭和の会議リテラシーの課題を見つけました。この章では、昭和の会議リテラシーの課題を解決し、令和の時代に合った会議リテラシーはどうあるべきかを考えていきます。

まず、アクティブラーニング(active learning)から始めたいと思います。

小中高のお子さんがいる方は、2020年から新学習指導要領になったことをご存知かもしれませんね。
新学習指導要領で「主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)」が重視され、児童生徒同士の対話型の活動を増やし、学ぶ過程を丁寧に解説する傾向が強まったそうです。

『2020年度、子供の学びが進化します!新しい学習指導要領、スタート!』 という2019年3月13日に出された政府広報があります。

「予測困難なこれからの時代。子供たちには自ら課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、自ら判断して行動し、よりよい社会や人生を切り拓いていく力が求められます。学校での学びを通じ、子供たちがそのような「生きる力」を育むために、学習指導要領が約10年ぶりに改訂され、2020年度より小学校から順に実施されます。」とあります。

やっと日本でもアクティブラーニングが学校で取り入れられました。
対話型の活動。児童生徒が対話をしながら学びます。その対話を促進するファシリテーターの役割を担うのが先生です。
先生の責任は大きいですね。ぜひ知見体験を他校の先生がたと共有し協働していただきたいです。児童生徒たちには、多様な意見を尊重しながら、刺激し合いながら、話し合いのリテラシーを学んで成長してもらいたいものだ、と私は願っています。

このコラムをお読みくださっている大人の方々も、小中高生に負けないようにしましょう!
今始めれば、児童生徒に追いつけるかもしれません。

私のおすすめは、ファシリテーションを会議に取り入れることです。
小中高生が学ぶ話し合いというものはどういうことなのか、自分たちの会議にファシリテーションを取り入れたらどうなるのか、まずはこの辺りから初めてはいかがでしょうか。


小中高の先生が担うファシリテーターとは、どんな役割なのかを学ぶことも大切です。ファシリテーターを育成することは、あなたが所属する組織に令和の会議リテラシーを根付かせるために必須となる、と私は考えています。ここは私がBTFコンサルティングを開業した理由でもあります。

次に、ファシリテーションを活用した会議リテラシーを見ていきましょう。

2章で書いたコンテクスト。コンテクストとは、コミュニケーションの基盤である言語・共通の知識・体験・価値観・ロジック・嗜好性などのことでした。

言語によりコミュニケーションを図ろうとすることをローコンテクスト(Low Context)といいます。コンテクストに頼った意思疎通が不得意とも言えます。ローコンテクストは、言語に対し高い価値と積極的な姿勢を示し、コミュニケーションに関する諸能力(論理的思考力、表現力、説明能力、説得力、交渉力)が重要視されます。

オンライン会議、オンライン商談、オンライン◯◯が増えてきました。今後も無くなることはないと思います。
オンラインでの話し合いはローコンテクストにならざるを得ません。

令和の会議リテラシーの土台をなすものの1つに安心安全な場という考えがあります。
安心安全な場には偏見差別がありません。会議は真剣に議論する場です。大切なものは意見でありアイデアであり、誰が言ったという人や役割に忖度することはありません。言い換えると、そんな余裕はありません。良いアイデアは良いのです。
誹謗中傷したり誰かを攻撃するようなものでない限り、何を発言しても受け入れられます。否定されることはありません。その発言している内容が理解できない場合は、訊きながら理解しようとします。
この辺りのことは、『会社の会議における「安心安全な場」とは?』で例を示しながら、わかりやすく説明しています。

会議は準備が大切です。

この議題であれば、どのように議論を進めるのが良いのか。具体的にはどんなフレームワークをどのタイミングで使って議論すれば良いのか、できるだけ具体的に議論のプロセスを設計します。
そして、誰を呼び誰を呼ばないのか、つまり必要な人は誰かを過不足なく選びます。
この辺りのことは、『会社の会議の進め方:場を作る』で具体例を示しながら、わかりやすく説明しています。

会議が始まったら、ファシリテーターは参加者から意見を引き出します。
人前で話すのが好きな人、話が長い人、今ひとつ何を言いたいのかはっきりしない人、人前で話すのが苦手な人、声の小さな人、等々色々な人がいますよね。

参加者の意見を公平に聴き、言いたいこと・伝えたいことを確認するために、ファシリテーターは傾聴と質問を使います。そして、意見・アイデアを、参加者の前に張り出した模造紙やホワイトボードに書き出したり、オンライン会議であればクラウドのホワイトボードを使ったりして共有します。このことにより、発言者は自分の意見やアイデアが受け入れられたと感じることができます。

話が長い人や今ひとつ何を言いたいのかはっきりしない人。こういう人に使っていただきたいフレームワークがあります。PREP(プレップ)というものです。PREP は自分の考えを相手に分かりやすく伝えるフレームワークです。PREP は、Point(結論)、Reason(理由)、Example(具体例)、Point(結論)の4つの頭文字で、PREP の順に簡潔に話すというテクニックです。

話が長い人や今ひとつ何を言いたいのかはっきりしない人が会議参加者にいる場合は、ファシリテーターが PREP の勉強会を開いて、会議の参加者にテクニックを学んでもらうと良いでしょう。
意見の引き出し方については、『会社の会議の進め方:意見を引き出す』で説明しています。

意見が十分引き出されたなら、次は意見をかみ合わせます。

ここで大切なことは議論を見える化することです。会議室の椅子に座って互いに言葉を交わすだけ。ホワイトボードも模造紙も使わない。こういう会議のスタイルは止めましょう。オンライン会議であれば、クラウドのホワイトボードを使って議論を見える化します。

どのように見える化するのか、どんなフレームワークを使って見える化するのかはファシリテーターの腕の見せ所です。

ファシリテーターとしては、会議を準備する段階で、いくつかの案を用意しておき、議論の進行に合わせて準備しておいたものを出すようにすると良いと思います。
意見をかみ合わせるやり方については、『会社の会議の進め方:意見をかみ合わせる』で説明しています。

意見が十分かみ合わさったら、合意形成の段階です。

意思決定に使えるフレームワークがいくつかありますので、適宜最適なフレームワークを選んで使うことになります。一例として RACI(レイシー)があります。RACI については、『RACI を活用して実施可能な To Do を合意しよう』でわかりやすく解説しています。

意見の対立は起こり得ます。令和の会議リテラシーは意見の対立を歓迎します。真剣な議論の場での意見対立は、その議論の目的である課題解決に向けて、真剣に良くしよう・解決しようとの考えからのものであり、合意できるところがあるはずです。特に会社の会議での意見対立では、大きなベクトルの違いがあることは少なく、1つ1つ丁寧に合意を重ねていくことで、意見対立を解消していける、と私は考えます。ファシリテーターは意見対立に対して、そのように対応します。
この辺りのところは、『会社の会議の進め方:意見をまとめる』で説明しています。

このコラムのタイトルに「アップデートしよう」という言葉を使いました。この言葉を使ったこころを説明して、このコラムを閉じたいと思います。

会議はビジネスパーソンにとって無くすことのできないものです。議論し協働することはビジネスの中核です。
複雑で不確実で予測困難な時代は何が正解か明確にはわかりません。とはいえ、立ち止まっているわけにもいきません。「最近自分たちの会議リテラシーがうまく機能しないようだな」と察知したなら、自分たちに合ったものにアップデートする必要があります。
iOSやアンドロイドがアップデートを繰り返して進化しているように、あなたのチームの会議リテラシーも進化し続けていけたら素晴らしいと思います。




最後までお読みいただき、ありがとうございました。
 
 
 

この記事を書いたプロ

小川芳夫

ファシリテーションの活用を支援するコンサルタント

小川芳夫(BTFコンサルティング)

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