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菊池浩史

「住まい×消費者×教育」のハイブリッドを目指す専門家

菊池浩史(きくちひろし)

住まいの消費者教育研究所

コラム

放置空き家が招く損失とは(その2)

2021年11月18日

テーマ:住まいの終活

コラムカテゴリ:住宅・建物

コラムキーワード: 空き家対策相続 手続きまちづくり

放置空き家が招くデメリットには、過去のコラムで取り上げた近隣に迷惑を及ぼす外部不経済や維持管理コストの他に、行政からの是正措置を受けることがある。それにはどういったものがあるのでしょうか。

平成27年5月26日、空き家に関する施策を総合的かつ計画的に推進することを目的にした「空家等対策の推進に関する特別措置法(以下「空き家対策法」)が完全施行されました。それまでは各自治体が条例等を定めて対応していましたが、空き家対策法によって、空き家の所有者や管理者が適正な管理に努めることや、管理不全が原因で周囲に著しい影響を及ぼしている特定空家等に対して、市区町村が「助言」「指導」「勧告」「命令」「代執行」ができるようになりました。

特定空き家等は次のような状態の空き家を対象となります。
  ①倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
  ②著しく衛生上有害となるおそれのある状態
  ③適切な管理が行われないことにより著しく景観を損なっている状態
  ④その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態

今までは財産権の問題があり、ハードルの高かった強制執行が、要件が明確化された代執行によって可能になりました。また勧告を受けた場合は、その土地の固定資産税の住宅用地特例がなくなり、税負担が最大で6倍と一気に上昇します。

空き家対策法による全国の改善指導等の内訳と件数は、空き家対策法の施行から5年間(平成27年~令和2年度)で、「助言・指導」19,029件、「勧告」1,351件、「命令」150件、「行政代執行」69件、「略式代執行」191件という状況です。

代執行には、老朽化により倒壊の恐れがある建物の除却に要した費用約1,040万円の回収のために土地を差押え・公売された事例」、外壁や屋根材が崩落したため建物の一部除却及び補修した費用約220万円が請求された事例があります。
 
また、空き家条例を制定し、空き家対策法と併せた改善指導等を行う自治体もあります。例えば、神戸市では、空き家対策法などを補完し、行政の支援が必要な課題に対して幅広く対応する目的で、平成28年6月に、「神戸市空地空家対策の推進に関する条例」が制定されました。

特徴の一つは、同条例では、空き家対策法より規制対象とする空き家の範囲を拡大しています。空き家対策法の特定空家等に該当しない空き家、具体には一部が使用されている長屋の空き住戸などを類似空家等として条例の対象に加えています。更に、空き家対策法では、空き家の定義を概ね1年間使用がされていないこととしていますが、1年未満であっても相当の期間使用されていなければ類似空家等として同条例の対象となります。

二つ目は、空き家対策法には定めがない応急危険回避措置や勧告に従わなかった場合の所有者等の氏名公表制度があります。令和2年度には、氏名公表4件、応急的危険回避措置1件が実施されています。

応急危険回避措置とは、市民の生命、身体又は財産へ危害が及ぶことを防止するために緊急の必要があるときは、代執行に拠らず必要最小限の措置が取られます。また、正当な理由がなくて自主的な改善が行われず、勧告にも従わない場合には所有者等の氏名や住所が公表されます。

その他、神戸市では、空き家対策法の特定空家等の勧告がなくても、「居住の用に供するために必要な管理を怠っている場合等で今後人の居住の用に供される見込みがないと認められる場合」などに該当すれば、固定資産税の住宅用地の特例が適用されない可能性があります。

このように空き家を放置し続けると、家計や近隣に及ぼす損失だけではなく、これまで以上に行政からの是正措置は厳しくなることが予想されます。予防の重要性が増していると言えます。

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