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菊池浩史

「住まい×消費者×教育」のハイブリッドを目指す専門家

菊池浩史(きくちひろし)

住まいの消費者教育研究所

コラム

売却しづらいお家

2021年11月27日

テーマ:住まいの終活

コラムカテゴリ:住宅・建物

コラムキーワード: 土地購入 ポイント不動産相続 手続き空き家対策

以前のコラムで、住まいの終活では自宅をスムーズに売却できるか、という出口戦略がポイントの一つだと指摘しました。出口戦略には、売却以外にも賃貸や建替え、取り壊し、現状のままで維持管理して相続するなどの選択肢があります。売却しやすい物件ならさほど問題はないかもしれませんが、売却しづらい物件は出口戦略に苦労します。自宅が存する地域に要因があったり、物件そのものに要因があったり、双方だったりします。

地域要因の一つが、市街化調整区域に立地している場合です。市街化調整区域は市街化が抑制されているため、原則、建替えなどが制限されています。例外的に建替えができる場合でも、そのための建設(開発)許可が必要になります。このように市街化区域に比べて建築制限が厳しいため不動産の市場換金性は劣ることになります。

二つ目は、災害リスクが高い地域です。近年の気候変動の影響で自然災害が頻発かつ激甚化しており、今年の7月にも熱海で土砂災害が発生し犠牲者が出ました。最近では災害リスクへの消費者の関心は高まっています。ハザードマップなどが市区町村のホームページで閲覧できるようになったことで、情報収集が容易になりました。今後は一層、水害や土砂災害等が発生しやすい低地や崖地、傾斜地などの地域に対して買い手は慎重になると思われます。

また、人口減少が著しい中山間地の過疎地域の他に、高齢化や人口転出が進行する都市部から離れたニュータウンなどは、新たな不動産需要を見込むことは容易ではありません。

次に、物件そのものが要因になっているケースです。
一つは接道条件が悪い物件です。建築基準法上の道路に2m以上接道していない、いわゆる無道路地や袋地は、原則、建替えができないため需要は大幅に減退します。都市部の住宅密集地など古くからの住宅地などでは比較的多く見られます。

二つ目は、不整形だったり狭小な土地へのは減退します。不整形地の程度にも拠りますが、使い勝手の悪さは否めません。自治体の中には最低敷地面積の規定があり、そこでは最低敷地面積を下回る土地では建替えができなくなります。

三つ目は、崖地や傾斜地に立地する物件です。安全性への懸念の他にも、資材搬入に重機が使えないため建築コストが上昇したり、建物の配置や構造面への制約が生じることがあります。そのため買い手サイドから敬遠されやすくなります。

上記のケース以外にも、劣悪な住環境や狭隘な街路に囲まれている物件などのように、出口戦略に課題を抱える物件は少ないありません。最後は売却価格に集約されることとなります。しかし、売却しづらい物件は売却の依頼先や他の選択肢を検討した方が良いこともあります。それには、住まいの終活を早めに着手し時間的余裕を持って進めることをお勧めします。

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