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菊池浩史

「住まい×消費者×教育」のハイブリッドを目指す専門家

菊池浩史(きくちひろし)

住まいの消費者教育研究所

コラム

自宅に住み続ける選択とバリアフリー

2021年6月30日

テーマ:住まいの終活

コラムカテゴリ:住宅・建物

コラムキーワード: まちづくりバリアフリー 住宅バリアフリー リフォーム

2016年2月に厚生労働省が実施した「高齢社会に関する意識調査」で、高齢期に対する意識の傾向を捉えるために、40歳以上の男女3,000人を対象に、高齢期の就労、健康づくり、暮らし、地域の支え合いなどについて質問を行っています。そのなかで「高齢期に生活したい場所は」という質問には、回答者の約70%が「自宅で生活したい」という結果でした。以下はその内訳です。
・自宅(これまで住み続けた自宅、子どもの家への転居を含む)72.2%
・高齢者住宅(サ高住、有料老人ホームなど)8.7%
・グループホームなど高齢者などが共同生活を営む住居4.4%
・特別養護老人ホームや老人保健施設などの施設2.5%
・医療機関0.6%
・その他、不明11.6%

自宅に住み続けたい希望があっても、その願いが叶うとは限りません。では、自宅に住み続けるためにはどういった条件が必要でしょうか。まずは、適切な医療・介護サービスを受けられる環境にあることです。個人差はあるものの、そのニーズは高齢になるほど高まります。身近に医療機関があることや介護サービスが利用できることは高齢期を安心して過ごすうえで欠かせません。次が買い物をする店が近いとか、交通の便がよいといった生活利便性の確保です。高齢者のネット利用も増えていますが、やはり円滑なモビリティは自立した生活を継続するうえでは必須です。そのために外部サービスの利用も一つの手段です。高齢単身世帯や高齢夫婦世帯が増加するなかで、家族の介護力低下は避けられません。費用負担を考えて上手に外部サービスを利用することが必要となります。そのモビリティは屋外だけでなく、住宅内でも安全に移動できるバリアフリー環境を確保しなければなりません。そうでなければ自宅で住み続けることが難しくなってきます。

ところでバリアフリー化が必要な背景には、建物構造上の要因と高齢期の暮らしの変化があります。建物構造上から来る要因には次のものがあります。
〇住宅の内外に段差が生じやすい。
・玄関ポーチと上がり框と敷居
・居室と廊下、洋室やトイレの入り口など
〇廊下や開口部の有効幅が狭い。
・三尺(910mm)の尺貫法が標準
〇一つ一つの居室面積が狭い。
〇和風の生活様式。
・畳、深い浴槽、和式トイレ
〇夏に合わせた構造
・居室と廊下やトイレ、浴室と脱衣室の温度差

次に暮らしの変化によるものです。
〇高齢化による在宅生活の長期化と要介護高齢者の増加
〇単独世帯や夫婦のみ世帯の増加による家族の介護力低下、
〇家庭内事故の多発(溺死、転倒、転落など)

住宅のバリアフリー化の整備水準は下表の通りです。住宅総数の約7割を占める1995年以前に建築された住宅のうち、「一定のバリアフリー化(二か所以上の手すりの設置、段差のない屋内)」を達成している割合は50%に満たず、「高度のバリアフリー化(二か所以上の手すりの設置、段差のない屋内、廊下などが車いすでも通行可能な幅)」に至っては10%に届きません。このように高齢期も安心して暮らすことができるバリアフリー住宅がまだまだ多数存在しているのが現状です。

住宅のバリアフリー化の現状

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