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「押し買い」問題 4 売買契約を結んだ後の救済方法(前段)

菊池捷男

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テーマ:宅建業法

「押し買い」問題 4 売買契約を結んだ後の救済方法(前段)

(1)真の狙いは売買契約の締結
 押し買いをする宅建業者は、不動産の時価(例:時価3000万円)を安く言い(例:時価は2200万円だ。)、その金額で所有者から不動産を買い、より高い価格(時価相当額)で転売することで利益(3000万円-2200万円=800万円)を得るのであるから、媒介契約を結んだだけでは、利益は確保できない。
 すなわち、宅建業者の得られる媒介報酬は、法律上規制を受けているので、最大で売買金額の「3%+6万円」が限度である。
したがって、時価3000万円の不動産の売買の媒介をしたときの報酬は96万円が限度である。しかし、媒介ではなく、売買契約に持ち込み、2200万円で不動産を買うことができ、これを3000万円で売ることができると、800万円の転売利益を得ることができるのである。そこで、押し買いをする宅建業者は、売買契約の締結に成功するよう、次のようなあやしげな説明を考えるのである。

(2)媒介契約は不利であり、売買契約は有利であるとの理由付け
一例:
宅建業者いわく。「宅建業者が媒介をして、売主と買主間に売買契約が成立しても、売買対象物件が中古住宅である以上、買主から契約不適合責任が追及されるリスクはあります。したがって、その場合、訴訟を起こされるリスク、訴訟にかかる費用負担のリスク、敗訴したときの損害賠償額の支払いのリスクが生じます。」と言い、不動産の所有者を不安に陥れる。
次いで宅建業者は、「不動産を当社に直接売ってくださると当社は時価の2200万円で買わせていただきます。当社が買うときは、売買契約書の中に契約不適合免責約款(契約不適合があっても売主の責任は追及しないという約束事項)を特約として入れますので、万一本件不動産に契約不適合があった場合でも、あなたには責任が生じないようにしてさしあげます。」と言い出す。

(3)不動産の所有者の心理状態と結果
 事ここに至ると所有者は、時価は2200万円だ。それを2200万円で売るにだから損はない。買主が当該宅建業者ならば契約不適合責任を免責するといってくれているのであるから、2200万円が減額することはない。訴訟を起こされるリスクもない。では、当該宅建業者に売ろう、という心理状態に陥る。そして、宅建業者に2200万円で不動産を売る。

 その結果は、宅建業者がこれを第三者(エンドユーザー)に転売して、まんまと800万円からの利益を得るということになる。
そうなったときの、売主の救済方法は、次回に解説する。

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菊池捷男(弁護士)

弁護士法人菊池綜合法律事務所

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