9 物言う株主(アクティビスト)が、上場会社に突きつけた刃
9 M&Aには、経営者の哲学が必要
日本経済新聞2023年8月31日付け「セブン&アイの誤算、ステークホルダー経営の高い壁」と、同新聞2023年9月14日付け記事「セブンの社是が泣く 遠い誠実、そごう・西武売却の教訓」を併せ読むと、セブン&アイは何を目的にそごう・西武を買収し(2006年6月に完全子会社にしたこと)、何を目的にこれをファンドに売却した(契約は2022年11月11日、履行は2023年9月1日)のかが理解できないところがある。
デパートを買収する認識はあったのだろうが、買収後には「高級ブランドはわからない」とさじを投げるセブンイレブン出身の役員もいたようなので、セブン&アイはそごう・西武を、デパート経営の意思で買収したことはわかるが、デパート経営の知見もノウハウももっていなかったのか、今般の売却前2年半もJR川口駅前の百貨店を閉鎖したままにしているし、ファンドへ売却の履行をする前日には労働組合からストを打たれるし、まことに迷走に次ぐ迷走を重ねたように思われる。
そのため、そごう・西武を投資ファンドへ売却すると決めた9月1日当日中には、ストの解決をせざるをえなくなり、同日ストを解決したものの、これには労働組合への現在および将来の保障という高い代償を支払ったであろうから、その費用負担分を売却代金から引くと、セブンイレブンは、結果において、想定よりはるかに安い金額でそごう・西武をファンドへ売却したものになったであろうと思われる。
しかもその上、マスコミからは袋叩きといってよいほどの批判がなされる結果にまでなってしまっている。
そう考えると、セブン&アイの経営トップには、そごう・西武を買収する際、いかなる経営哲学をもって臨んだのかという疑問が沸く。
日本経済新聞の記事の中の言葉「ステークホルダー経営の高い壁」や「セブンの社是が泣く 遠い誠実」などという批判の言葉から透けてみえることは、哲学なきM&Aは失敗するという教えではないだろうか。
明日触れるが、M&Aの失敗は、東芝が先輩格だ。
これにも経営哲学があったようには思えない。