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4.我が国のコーポレートガバナンス改革の流れ

2023年3月26日 公開 / 2023年3月28日更新

テーマ:コーポレートガバナンス改革

コラムカテゴリ:法律関連

4.我が国のコーポレートガバナンス改革の流れ

我が国のコーポレートガバナンス改革は、2013年の安倍内閣による「日本再興戦略」で構想され、2015年に金融庁と東京証券取引所が、上場会社のためのコーポレートコード(CGコード)を策定することで一応の形はできた(2018年と2021年には改訂)。
しかし、我が国の上場会社のコーポレートガバナンス改革は、お世辞にもよく出来ているとは言えない。そこで、その内容を概観していくこととする。

(1)CGコードとは、何か?
CGコードとは、法律(ハードロー)にあらざる規範(ソフトロー)である。すなわち、法律のような強制力はないが、CGコードを遵守(comply)しない会社は、遵守しない理由を説明(explain)することが求められ(これを「comply or explain」の原則という)、complyもしなければexplainもしないという会社が出ると、投資家からダイベストメント(divestment・投資忌避)に遭う恐れが生ずるので、事実上、上場会社はいずれも、やがてはCGコードを遵守せざるを得なくなるのである。
現在は、コーポレートガバナンス改革の途上にあり、CGコードの遵守をしたくない企業とCGコードの遵守を強く求める物言う株主(アクティビスト)が激しく鎬を削って戦っている図も、散見される、というよりも、近時はますます多くの会社に、その姿が見られるようになっているところである。

(2)CGコードの指標とするもの
CGコードが目指すところは、日本の上場会社を、アメリカの上場会社と同じ機関設計の会社にすること、すなわち、指名委員会等設置会社にすることである。

指名委員会等設置会社は、2002年に導入されたアメリカ法由来の制度で、当初は「委員会等設置会社」と呼ばれ、その後「委員会設置会社」と呼ばれ、現在では「指名委員会等設置会社」と呼ばれているモニタリングモデルである。すなわち、 「業務の執行」と「監督」を分離し、社外取締役が一定比率を占める取締役会に、執行役の選任・解任権限を与えて「経営陣の監督」を担わせる仕組みの会社組織である。

業務執行を担うのは執行役であるが、執行役と取締役の兼任は認められている(ただし、監査委員と執行役の兼任は不可。監査をする者と監査対象になる者を同一人にすれば、利益相反になるからである。)。

この指名委員会等設置会社は、導入後20年も経過するも、上場会社の3%程度しか採用されていない、すこぶる日本の企業経営陣には不人気な制度である。

不人気な原因は、この機関設計の会社になると、
①取締役会内に、指名委員会、報酬委員会及び監査委員会という三つの委員会を置き、各委員会の委員の過半数が社外取締役であることと、
②指名委員会と報酬委員会の権限が極めて大きいことにある。

すなわち、上場会社の経営陣(執行役)とその監督者(取締役)は、指名委員会が指名し、そこで指名された者以外の者を、株主総会の選任議案とすることはできないこと、また、経営陣の報酬は、報酬委員会が決めること、平たく言えば、上場会社の執行役や取締役の人事権とこれらの者に対する報酬決定権(力と金)が、社外取締役に握られていることにある、とされている。

この指名委員会等設置会社は、従来型の監査役会設置会社での慣行が全面的に否定されるからであると、言ってもよい。
すなわち、従来型の監査役会設置会社の場合は、事実上、経営陣の人事権は経営陣が握り、経営陣の報酬は経営陣が決めているので、経営陣にとっては、大過なく経営をしていれば、首になる(解職される)こともなければ、報酬が減額される恐れもないからである。

しかしながら、欧米の投資家たちは、監査役会設置会社のような従来型の微温的な経営を望んではいない。
上場会社の経営陣には、企業の株主の利益が最大になるような経営を求めているからである。

要は、我が国のCGコードも、欧米の株主の意向に沿った、コーポレートガバナンス改革を、日本の上場会社に求めているのである。

この記事を書いたプロ

菊池捷男

法律相談で悩み解決に導くプロ

菊池捷男(弁護士法人菊池綜合法律事務所)

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