38.社外取締役の有用性の認識が広がってきたが・・・
1.テスラとコダックの相違点と共通項
“滄海変じて桑田となり、桑田変じて滄海となる。”という言葉は、時勢の移り変わりの速さ・激しさを形容する言葉であるが、最近の経済事象を見ると、この言葉は、産業の盛衰を説明するのにふさわしいものではないかと思われる。
電気自動車(EV)産業など、20年前までは、渺々万里の青い海原でしかなかったところに、巨大な地殻変動が起こり、陸地が隆起したかと思うと、いつしか緑豊かな桑畑になった感がある産業である。
すなわち、現在世界一の電気自動車メーカーに成長したテスラは、今からわずか19年前の2004年4月に設立され、2010年に米ナスダック市場に上場した新興企業であるが、その資金調達力には驚くべきものがあり、創業以来何度かエクイティ・ファイナンス(新株発行による資金調達)による資金調達をしたが、2020年という年に限って言っても、1年間だけで3回もエクイティファイナンスをし、その間だけで、邦貨にして約1兆円を調達したという。
それだけでなく、同社の株価は、高騰し、同社株の時価総額は2020年の1年間で7倍になるほど人気化し、2021年1月7日時点で、テスラのCEOであるイーロン・マスク氏の純資産額は1885億ドル(約19兆6000億円)になり、世界一の富豪になったということである(現在の一位は、交代があるので不明としておきたい)。
一方で、“桑田変じて滄海となる”産業も生まれる理屈になるが、コダックなどはその代表格になるであろう。同社は世界一の銀塩フイルムメーカーであったが、2012年に倒産し、海の藻屑となって消えてしまったからである。
テスラのような興隆する企業は、資本市場(株式市場)から、返済義務を負わない資金調達のできる、新たな価値を創造する企業である。
一方、コダックのような滅ぶ企業は、過去の成功体験の上に安住して、新たな価値の創造をしなくなった、したがって、資本市場から資金の調達もできなくなった企業である。
こう考えると、テスラとコダックの違いは、資本市場から多額の資金を調達する会社とそれができなくなった会社ということになり、共通項は資本市場の恩恵を受けた会社(テスラは現在、コダックは過去に)ということになる。