労働 減給処分における減給額の制限
2021/06/15 試用期間中の解雇と普通解雇の違い
最高裁の昭和48年12月12日大法廷判決は、
1.試用期間を設け、雇用契約の解約権を留保する趣旨につき、
「新規採用にあたり、採否決定の当初においては、その者の資質、性格、能力その他上告人のいわゆる管理職要員としての適格性の有無に関連する事項について必要な調査を行ない、適切な判定資料を十分に蒐集することができないため、後日における調査や観察に基づく最終的決定を留保する趣旨でされるものと解され」る。
2.普通解雇との違いにつき
「留保解約権に基づく解雇は、これを通常の解雇と全く同一に論ずることはできず、前者については、後者の場合よりも広い範囲における解雇の自由が認められてしかるべきものといわなければならない。」
3.留保解約権行使の有効要件につき、
「企業者が、採用決定後における調査の結果により、または試用中の勤務状態等により、当初知ることができず、また知ることが期待できないような事実を知るに至つた場合において、そのような事実に照らしその者を引き続き当該企業に雇傭しておくのが適当でないと判断することが、上記解約権留保の趣旨、目的に徴して、客観的に相当であると認められる場合には、さきに留保した解約権を行使することができるが、その程度に至らない場合には、これを行使することはできないと解すべきである。」
と説いている。
4.平たく言えば
平たくいえば、試用期間とは、従業員として採用はするが、その者について十分な人物調査ができないまま採用するのであるから、採用後の一定期間(試用期間)内に分かった事実が、採用段階で分かっていたら、とても従業員としては採用しなかったといえるほどのものであり、客観的にもそう判断されるようなものであれば、解雇ができるというものである。
前記最高裁判決の事例では、当該従業員が、当該会社の従業員採否の決定を左右するほどの「重要な事実を秘匿した」かどうかを、原審(高裁)に判断させるため、原判決を破棄した事案であるので、「重要な事実の秘匿」は、試用期間内の解雇理由の一つになり得るのである。
そして、その重要な事実とは、
①その者の資質、
②性格、
③能力
④その他、会社の要求する管理職要員としての適格性の有無に関連する事項である。