債権法改正 大改正。債権の原則的な消滅時効期間は5年になる。短期はなし
1,錯誤の判断基準になる
改正民法95条1項は、「意思表示は、次に掲げる錯誤に基づくものであって、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、取り消すことができる。」と規定している。
改正前の95条本文は「意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは、無効とする。」と規定されていたものを改めたものである(ここでは、錯誤を無効理由から取消理由にしたことは別論とする。)。
改めた内容は、錯誤の判断基準を明確にした点である。
改正前はたんに「法律行為の要素に錯誤があったとき」としていたのを、
改正法は「錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるとき」に改めたのである。
したがって、重要なことは、「法律行為の目的及び取引上の社会通念」が規準になって、錯誤の重要性が判断されることになったのである。
2,特定物の引渡しの場合の善管注意義務
改正法400条は、債権の目的が特定物の引渡しであるときは、債務者は、その引渡しをするまで、契約その他の債権の発生原因及び取引上の社会通念に照らして定まる善良な管理者の注意をもって、その物を保存しなければならない。」と定め、善管注意義務の判断基準も「契約その他の債権の発生原因及び取引上の社会通念」であることをあきらかにした。
3,履行不能の判断基準(412条の2第1項)と債務不履行による損害賠償に際しての帰責性の基準(415条1項ただし書)その他
これらの判断基準も「契約・・・及び社会通念」になっている。
4,契約書に目的条項を書くことの重要性が増した
具体的には、契約締結に至る経緯、動機、契約の背景、意図や前提条件を契約書に書く必要性が大きくなったのである。
それに関して、「善管注意義務の内容を具体的に書く」などの工夫もなすべきである。