社外取締役の有用性
3.指名委会社の機関
菊池:指名委会社とは、どんな機関でできている会社なのだい?
後藤:次のような機関から成る会社だよ。
(1)業務執行機関は、代表執行役・執行役
(2)取締役会の権限
①経営の基本方針、法で定めた重要事項の決定・承認
②執行役・代表執行役の選任・選定及び解任・解職、
③三委員会の委員の選任・解任等
(3)三委員会の役割と権限
・特徴:委員は全員取締役。そのうち過半数は社外取締役
①指名委員会
株主総会に提出する取締役の選任・解任議案の決定
②報酬委員会
取締役、執行役の個人別報酬の決定、開示
③監査委員会
業務監査(適法性監査及び妥当性監査)と会計監査
4.指名委員会の役割・権限
菊池:ねえ、後藤くん。ボクは、学生時代にはなかった指名委会社についてあまり知識はない。そのため、君との対話に備えて、江頭憲治郎著「株式会社法」第7版(有斐閣発行・斯界の最高権威とされている書籍)を読んでみたのだが、三委員会の制度目的に、分からないことがあるのだ。まず、指名委員会について訊きたいが、指名委員会は何をする委員会なのだい?
後藤:会社が株主総会に提出する取締役の選任・解任議案の決定だよ。
菊池:会社がする取締役の選任は、株主総会でするものだよね。そして、多くの会社では、取締役会が、次期の取締役の選任案を決めて、それを会社の案として株主総会に提出しているよね。それを、指名委会社では、指名委員会だけが、会社の提案として、取締役候補を挙げうるということなのかい?
後藤:そうだよ。普通の会社(ここでは「監査役会設置会社」)の場合は、次期取締役候補者は、取締役会、特に代表取締役の意にかなった者が提案されているのでね、それでは不明朗だとされて、指名委会社では、指名委員会だけが、会社提案の取締役候補者を決めることにしたのだよ。
菊池:では、指名委員会が決めた取締役候補者は、取締役会で否定したり変更したりはできないのかい?
後藤:できないね。指名委員会の委員の過半数は社外取締役になっているのでね。代表取締役の顔色を見て次年度の取締役候補を決めるようなことはしないと考えられるだろう。
菊池:むろん、株主は、別途、取締役にふさわしいと考える人物を、取締役の候補として、提案(株主提案)することはできるのだろう。
後藤:むろん、そうだよ。次期の取締役候補者は、公正な観点から指名委員会が考え、提案する。しかし株主は、別途、株主提案として別の取締役候補者を立てて、株主総会で株主の意思を問うことをしてもいいよ。現に、2019年6月にあったLIXIL(指名委会社)の株主総会では(日経新聞「経営陣 株主が選ぶ」2019年6月26日)、会社提案の取締役候補者8名のうち2名が否決され、株主提案の候補者8名全員が可決されたことから、それまでのCEOはその地位を失ったが、このような株主提案による取締役の選任は、監査役会設置会社においても、指名委会社においても、可能だよ。