コラム
セクハラ行為をした者に対する最高裁の評価基準
2019年7月17日
最高裁平成27年2月26日 懲戒処分無効確認等請求事件の判決から、最高裁が考えるところが分かります。
この事件は、被上告人(上司)X1を出勤停止30日,被上告人(上司)X2を出勤停止10日とした各出勤停止処分が、懲戒処分として重きに失し社会通念上相当性を欠くので無効だと主張するX1とX2からの訴訟事件です。
1 被害者が明白な拒否の姿勢を示していなかったので許されると思ったとの弁解に対して。
「原審は,被上告人(加害者・上司)らが従業員(被害者・部下)Aから明白な拒否の姿勢を示されておらず,本件各行為のような言動も同人から許されていると誤信していたなどとして,これらを被上告人らに有利な事情としてしんしゃくするが,職場におけるセクハラ行為については,被害者が内心でこれに著しい不快感や嫌悪感等を抱きながらも,職場の人間関係の悪化等を懸念して,加害者に対する抗議や抵抗ないし会社に対する被害の申告を差し控えたりちゅうちょしたりすることが少なくないと考えられることや,上記(1)のような本件各行為の内容等に照らせば,仮に上記のような事情があったとしても,そのことをもって被上告人らに有利にしんしゃくすることは相当ではないというべきである。」
2 セクハラに対する会社の方針を知る機会がなかったので、自分の言動(セクハラ行為)が悪いものと認識できなかったとの弁解に対して。
「また,原審は,被上告人(加害者)らが懲戒を受ける前にセクハラに対する懲戒に関する上告人(加害者と被害者を雇用している会社)の具体的な方針を認識する機会がなく,事前に上告人から警告や注意等を受けていなかったなどとして,これらも被上告人(加害者・上司)らに有利な事情としてしんしゃくするが,上告人(会社)の管理職である被上告人(加害者あ)らにおいて,セクハラの防止やこれに対する懲戒等に関する上記(1)のような上告人の方針や取組を当然に認識すべきであったといえることに加え,従業員Aらが上告人に対して被害の申告に及ぶまで1年余にわたり被上告人らが本件各行為を継続していたことや,本件各行為の多くが第三者のいない状況で行われており,従業員Aらから被害の申告を受ける前の時点において,上告人が被上告人らのセクハラ行為及びこれによる従業員Aらの被害の事実を具体的に認識して警告や注意等を行い得る機会があったとはうかがわれないことからすれば,被上告人らが懲戒を受ける前の経緯について被上告人らに有利にしんしゃくし得る事情があるとはいえない。」
3 社員が懲戒処分を受けたことを項各理由とする会社の規定の有効性を認めた
「(会社は)社員が懲戒処分を受けたことを独立の降格事由として定めているところ,その趣旨は,社員が企業秩序や職場規律を害する非違行為につき懲戒処分を受けたことに伴い,上記の秩序や規律の保持それ自体のための降格を認めるところにあるものと解され,現に非違行為の事実が存在し懲戒処分が有効である限り,その定めは合理性を有するもの(したがって、有効)ということができる。」
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