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遺言執行者観に関する謬説がなくなるまで⑥

菊池捷男

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テーマ:令和時代の相続法

6 学説や判例のいう遺言執行者観

 学説や判例は全て、遺言執行者は遺言者に代わって遺言を実現する者と考えている。また、遺言執行者が相続人の代理人であることを否定している。
 すなわち、
(1) 学説の説くところ
 相続法の権威者である故中川善之助の著書「相続法」(有斐閣・法律学全集24)は、名著であるが、この中に、「遺言執行者は誰のために執行の事務を行うのか。最も常識的に考えれば、執行者は、遺言者に代わって、遺言を実現させる者といえよう。廃除の場合など、明らかに父に代わって子の相続権を剥奪しようとするのである。」と書かれている。他の学説も同じである。
 遺言執行者を、相続人の代理人だという学説は、著者の知る限り皆無である。
なお、教科書の代表格ともいうべき下記書籍には、民法1015条については、次のように書かれている。


中川善之助の「相続法」いわゆる相続人代理説(は)、・・・世界の学会では,つとに問題とされ,ほとんど葬り去られたに近い学説である。
新版注釈民法(28)
(民法1015条の)構成は,多くの論者の指摘するように,必ずしも十全な構成とはいえない。・・・本条の主たる意味は,遺言執行者の行為の効果が相続人に帰属することを明らかにしたものと考えるべきことになる。

(2)判例の説くところ
 判例も、大審院時代から「遺言執行者を設くるは、遺言が適正に執行せられることを目的とし主として受遺者の利益を保護するの趣旨に出でたるもの」(大審院昭和13年2月26日判決より)としている。
 遺言執行者を相続人の代理人だといった判例も皆無である。

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菊池捷男(弁護士)

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