労働 減給処分における減給額の制限
最高裁第一小法廷平成12年9月7日判決は、特定の年齢層の従業員(60歳定年制の下で55歳を超えた銀行の行員)に、労務の内容は従前と変わらないのに、一方的に不利益な就業規則の変更(賃金の半額に近い切り下げ)をしたことは、行員の約73パーセントを組織する労組が就業規則の変更に同意しているとしても、それに同意していない従業員には効果がないとの判示しました。
その判旨部分は、以下のとおりです。
「上告人らは、段階的に賃金が増加するものとされていた賃金体系の下で長く就労を継続して50歳代に至ったところ、60歳の定年5年前で、賃金が頭打ちにされるどころか逆に半額に近い程度に切り下げられることになったものであり、これは、55歳定年の企業が定年を延長の上、延長後の賃金水準を低く抑える場合と同列に論ずることはでき」ず、この件の「賃金体系の変更は、中堅層の労働条件の改善をする代わり55歳以降の賃金水準を大幅に引き下げたものであって,差し迫った必要性に基づく総賃金コストの大幅な削減を図ったものなどではなく、・・・(中略)・・・本件就業規則等変更は、それによる賃金に対する影響の面からみれば、上告人らのような高年層の行員に対しては、専ら大きな不利益のみを与えるものであって、他の諸事情を勘案しても、変更に同意しない上告人らに対しこれを法的に受忍させることもやむを得ない程度の高度の必要性に基づいた合理的な内容のものであるということはできない。したがって、本件就業規則等変更のうち賃金減額の効果を有する部分は、上告人らにその効力を及ぼすことができないというべきである。」
【筆者の意見】
この件の原審高裁判決は、就業規則の変更を有効だと解しました。
この件の最高裁判決は、本件就業規則の変更により不利益を受けることになる55歳以上の全従業員が40数%から50数%もの給料減額になるが、それはその前の年齢域にある中間層の給与体系の改善のためであるから就業規則変更に合理的理由がないというものです。
この最高裁判決をどう読み取るかは、読む人によって意見が異なると思われます。要は、一般論化し難い判決(判例にはならない判決)だと思います。、