コラム
堺は、芸術・技芸の淵藪(えんそう)であった
2017年12月5日 公開 / 2017年12月6日更新
堺は、芸術・技芸の淵藪(えんそう)であった。
これは、海音寺潮五郎の小説「天と地と」の中の一節です。
ここで淵藪(えんそう)とは、「淵」が「ふち」すなわち魚が寄り集まる場所、「藪」は「やぶ」すなわち鳥獣の寄り集まる場所、ここから淵藪とは、物事の寄り集まる場所、そこを中心にして栄えている場所を意味する言葉です。
ですから、堺が芸術・技芸の淵藪という場合、堺は、芸術・技芸が生まれ、発展し、中心地になったという意味の言葉です。
戦国時代は、群雄が割拠し、寸地尺土を争って殺し合う世界を現出しています。
この時代は、上は皇室であっても式微し、破れた築地の補修もできない有様。貴族も、娘を各地の有力な豪族に嫁がせ、やっと口を糊する始末。豪族は豪族で、いつ何時一族郎党まとめて隣国から攻め滅ぼされるかもしれない危険と隣り合わせの日々を送り、農民は常に兵士として徴発され、簡単に命を落とし、町屋(町人)は、敵に攻められれば、当然のごとく放火され、家は焼失し、財産は奪われ、婦女子は陵辱される悲運に泣くという世界ですが、このような中にあって、堺は、後には納屋衆と呼ばれる商人たちが、商いで稼ぎ蓄えた財力をもって、将軍家(室町幕府)から自治権を買い取り、独自の文化を生み出す地となるのです。商人の、というよりも人の逞しさには驚嘆します。堺や京大阪は、やがて、絢爛豪華な安土桃山文化の華を開かせたことは、あまりに有名です。
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