コラム
身を滅ぼす怒りの元 1
2017年11月9日
徳川家康が、惜しんでも余りある、そして生涯の悔いになった長男信康の切腹。
その原因が、信康の怒りの感情にあったとすると、その身を滅ぼした怒りの元は、はっきりさせておきたいものである。
信康は、妻である織田信長の長女徳姫の侍女を、怒りの感情から、徳姫の目の前で、しかも残虐な方法で殺した。また、信康は、鷹狩りでの不猟を、たまたま出会った僧侶のせいだとして、その僧侶を殺した。
その暴虐を、徳川家の重臣から咎められ諫言されたとき、自分が僧侶を殺した罪など、岳父たる信長が石山本願寺の信徒多数を殺害したことと比べ軽いものだと放言した。
信康の二件の殺人には、殺人を正当化させる理由はない。一方、信長のした石山本願寺に籠もった兵や家族の殺戮は、戦争の中での殺戮である。戦争時に人を殺すことと、平生の生活の中で罪なき弱者を殺すことの違いもわきまえない信康の思慮を、信長は、“たわけ”と言い捨てた。そして、このような“たわけ”を、武田軍の前に置いておくことは危険だとして、家康に、信康は可愛い娘の婿であるが、切腹をさせても苦情は言わないとの言葉を伝えて、信康を死に至らしめたのである。
信康の死の原因は、怒りの感情の爆発であった。豊臣家が大阪夏の陣で滅んでしまった遠因も、淀君という一人の女性の怒りの感情であった。
では、怒りの感情、すなわち、身を滅ぼすことや大事を誤ることになる激気は、どのようにして、人の中で生まれたのであろうか?
また、人は、このやっかいな激気という魔物を、抑えることはできないのであろうか?
次回に、この問題を少し考えてみたいと思う。
関連するコラム
- 弁護士と格言 口論乙駁は,コンセンサスを求める場にふさわしからず 2014-03-22
- 弁護士の心得 根拠のない「思います」は禁句。根拠を示して答えるべし。 2015-01-01
- 弁護士の心得 専門に特化しながら、専門外から謙虚に学ぶべし 2015-01-05
- 弁護士と格言 蟹は甲羅に似せて穴を掘る 2014-03-14
- 弁護士の心得 「できません」は禁句。「こうすればできます」で答えるべし。 2015-01-02
コラムのテーマ一覧
- 時々のメモ
- コーポレートガバナンス改革
- 企業法務の勘所
- 宅建業法
- 法令満作
- コラム50選
- コロナ禍と企業法務
- 菊池捷男のガバナー日記
- 令和時代の相続法
- 改正相続法の解説
- 相続(その他篇)
- 相続(遺言篇)
- 相続(相続税篇)
- 相続(相続放棄篇)
- 相続(遺産分割篇)
- 相続(遺留分篇)
- 会社法講義
- イラストによる相続法
- 菊池と後藤の会社法
- 会社関係法
- 相続判例法理
- 事業の承継
- 不動産法(売買編まとめ)
- 不動産法(賃貸借編)
- マンション
- 債権法改正と契約実務
- 諺にして学ぶ法
- その他
- 遺言執行者の権限の明確化
- 公用文用語
- 法令用語
- 危機管理
- 大切にしたいもの
- 歴史と偉人と言葉
- 契約書
- 民法雑学
- 民法と税法
- 商取引
- 地方行政
- 建築
- 労働
- 離婚
- 著作権
- 不動産
- 交通事故
- 相続相談
カテゴリから記事を探す
菊池捷男プロへの
お問い合わせ
マイベストプロを見た
と言うとスムーズです
勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。