会社法の歴史 1 はじめは「商法」であった 「商法」はドイツ法に倣ったものだった。そして、戦後・
「のう、後藤!社外取締役のことを教えてくれ!」
「社外取締役というのはな。厳密には細かな要件を満たした者でなければならないが、一口で言うと、子会社を含めた会社の業務執行取締役でも従業員でもない、外部から来た取締役のことだ。もともと会社法は、社外取締役を置くことを強制はしていないが、平成27年3月、金融庁と東京証券取引所は、上場企業に対し、コーポレートガバナンス・コード(行動規範を含む企業統治の指針)を示した際、上場会社は社外取締役を2人以上選任すること、もし社外取締役を選任しない場合は、選任しない相当な理由を明らかにすることを、要求したんだ。ここでいう「相当な理由」とは、社外取締役を置くとかえって株主共通の利益に反する理由を指しており、よくありがちな「わが社は、コンプライアンスを遵守した内部統制システムに基づいて経営している」とか、「適任者がいない」とか、「社外監査役を2名設置してガバナンスに問題はない」というような理由では足りないと解さているんだよな。そうすると、これ以外の「相当な理由」があるかというと、なかなか思いつかないわな。したがって、上場会社は、事実上、社外取締役を置くほかないということなんだ。」
「社外取締役の設置は、これもアメリカの要請かい。」
「そうだよ。アメリカの取締役会では、社外取締役が過半数を占めているが、それほど社外取締役が重要視されているんだ。重要視される理由は、当該取締役が会社の事業活動にしがらみや利害関係を持たず、したがって、それにより公正な意見を出して、コートレートガバナンスが通りやすいということだよ。」
「で、社外取締役がいて、役に立ったという、具体的な事例というものがあるのかな。」
「あるよ。ただ、社外取締役制度は、旧商法時代の平成14年改正によって、委員会設置会社制度が導入された際、これとセットで、持ち込まれた制度なので、それより前には社外取締役という者はいなかった時代の事件であるので、厳密には社外取締役とはいえない銀行出身の取締役がいてな。彼が、違法な業務執行をした社長の代表権を奪った有名な事件があるよ。これなど、社外取締役のお手本にもなるケースといってもいいな。それは老舗で東証一部上場のMデパートの某代表取締役社長が、一時は雑誌の表紙を飾るほどの名経営者といわれたものが、その後ワンマンになり、不祥事を重ねてマスコミでも批判されるようになったんだ。しかし、他の取締役は、それを知っても当該社長の暴走を止めようともしなかったため、銀行出身の取締役が、サスペンス映画もどきの手法を使って、取締役会で代表取締役を解職したケースだ。」
「ふーん。なるほど。この事件での代表取締役解任の件は、俺も知っているが、社外取締役の活躍によるものとは知らなかったなあ。」
「社内の生え抜きの取締役では、社長の違法行為を阻止することはできなかったものを、今の社外取締役の要件を満たした取締役が、敢然として社長の違法行為を非難し、他の取締役に対し、今社長の違法行為を阻止しないのなら、他の取締役も背任や横領罪の共犯になるぞ、と言って、取締役会で社長の解職を迫ったらしいが、これなど、社外取締役の有用性を証明するに十分と言ってよい事例だと思うよ。」
「なるほど。同感だねえ。」