コラム
代表取締役解職劇の裏にあった法律論争
2017年8月8日 公開 / 2017年9月6日更新
「後藤よ!昨日の話の続きだが、Mデパート社長解任劇に、何か法律論争があったというが、どんな論争かのう。」
「Mデパートの社長解任劇、今の会社法でいうと、代表取締役の解職劇だが、そこには次の三つの法律上の論争があったよ。第1が、代表取締役解職議題を事前に全取締役会に通知すべきかどうか、という問題、第2が、この解職では、代表取締役に議決権はないのかどうか、という問題、第3は、解職議題について、代表取締役に出席権や発言権が認められるかどうか、という問題だ。菊池よ。お前はどう思う。」
「答えは、明確だ。第1の問題については、取締役会は、会社経営上のすべてについて協議決定できる機関だ。あらかじめ議題を通知しなくとも、会社経営上の問題について決議するのになんの支障があろうや、だ。それになあ、取締役会の議題が代表取締役の解職だろう。これを代表取締役に事前に通知しなければならないとなったら、代表取締役からどのような妨害がなされるかしれたものではない。だから、あらかじめ議題の通知は不要だ。第2の問題だが、Mデパート事件の社長は、解職の対象になっている取締役だろう。だったら特別利害関係人だ。特別利害関係人には議決権はないわな。この二つの問題は、教科書にもそう書いてあるので、正解を言えるが、さて、第3の出席権や発言権が認められるかについては、明確ではないなあ。俺としては、解職の対象になる者には、弁解の機会を与えるべきだと思うので、出席権や発言権は認めるべきじゃあないのかと思うがのう。」
「正解を言うとな。第1の問題は、お前の言うとおりだ。第2の問題はなあ、判例はお前の言うとおりだが、学説には反対説もある。第3の問題はなあ、判例はなく、学説は、肯定説と否定説の両説がある。Mデパート代表取締役社長解任劇の裏には、このような法律論争もあったということだよ。」
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