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立法論としての相続法⑤ 寄与分制度の見直し

2017年7月1日

テーマ:相続判例法理

コラムカテゴリ:法律関連

コラムキーワード: 相続 手続き

寄与分制度というのは、相続人の中に、
①「被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした」者がいたり、
②「被相続人に対し療養看護をした」者がいる場合は、
その者に、遺産分割の対象になる遺産から、一定の金額又は割合の寄与分なるものが別途与えられるという制度です。
ところで、この寄与分制度、相続人に満足を与えているかといいますと、そうなっていない現状にあります。
それは、
①については、「財産の維持又は増加について特別の寄与」をした相続人でないと寄与分が認められないこと、
②については、扶養義務を超える療養看護をした者でないと寄与分が認められないこと、
に原因があるとされています。

要は、寄与分が認められる要件が、厳格であり、硬直的であり、融通が利かないことに原因があるようです。

例えば、子であるAは、被相続人と同居し被相続人の療養看護をして苦労をしたが、Aがした療養看護は、子ならば当然なすべき義務の範囲だとされると、寄与分が認められません。
一方、Bは親と同居をせず、療養看護もしなかったという場合、A(特にAの妻)としては、親と同居し、気を遣い、苦労をした分が全く評価されない点に、不満を持つということが実務では結構あるのです。

 寄与分は、実質的に公平な遺産分割をするため、他の相続人との相対的な比較の中で、もっと弾力的に運用できるように、見直すべきではないかということが、法制審議会民法(相続関係)部会の第3回会議で取り上げられています。

 無論、権利の発生要件は、法で定められ、その要件を満たさない限り、権利は認められないというのが、法の原則ですから、寄与分が認められる要件も、その解釈に当たっては、厳格であり、硬直的であり、融通が利かないいう性格を、構造的に持っているわけですので、寄与分に関してのみ、その法の厳格性を薄め、その分、裁判所に大きい裁量権を与えてよいかという問題は議論されなければなりません。

この記事を書いたプロ

菊池捷男

法律相談で悩み解決に導くプロ

菊池捷男(弁護士法人菊池綜合法律事務所)

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