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宅建業者の重要事項説明義務違反の一事例 税制度の説明の過誤

菊池捷男

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テーマ:宅建業法

 東京地裁昭和49年12月6日判決は、
不動産の所有者である甲(大学教授)に対し、同人が所有する土地(固定資産)と、会社所有の土地(たな卸資産)の交換を持ちかけた不動産会社の従業員乙が、甲から、不動産の売買・交換等によって高額の税金が賦課せられることになれば、大学教授としての薄給の身では到底その負担に堪えられないと言われたので、その交換については所得税法上の交換の特例が適用されるので税金はかからないと説明し、甲がそれを信じて交換に応じたが、その後、甲に、甲の持つ土地は固定資産であったものの交換によって得る土地がたな卸資産であったため交換の特例の適用を受けることができず所得税がかかったという事案で、

「およそ、不動産の売買・仲介・斡旋、宅地造成等を業とする会社の社員たるものは、不動産自体に関する知識のみならず、その取引に必要な民法、税法その他の法律上の知識・経験を有するものとして仲介・斡旋の委託者は勿論これら不動産業者の社員と直接売買・交換等の取引をする一般私人もこれを信頼し、これら社員の介入あるいは社員との直接取引に過誤のないことを期待するものであるから、この社会的要請に鑑み、これら不動産業者の社員は委託を受けた相手方に対しては委任ないし準委任を前提とする善良な管理者としての注意義務を負うことはもとより、直接これら社員と取引するに至つた一般私人に対しても、信義誠実を旨とし、目的不動産の瑕疵、権利者の真偽については勿論租税の賦課等につき格段の注意を払い、もつて、取引の相手方に取引上の過誤による不測の損害を生ぜしめないように配慮すべき業務上の一般的注意義務があり,もしこの注意義務の懈怠の結果これを信頼して取引をなした相手方に不測の損害を被らしめたときには、一般不法行為によつてその賠償の責を負うものと解するを相当とする。」

と判示して、不動産会社に対し、所得税相当額の損害賠償を命じました。

一般的には、不動産取引を仲介する業者に、税法知識を保有しておく義務が課せられているものではありませんが、業者の従業員が、間違った税知識を伝えることで、顧客に不測の損害を与えた場合は、その賠償責任が生ずるということになります。

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菊池捷男(弁護士)

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