継続的契約の一方的な解約は許されるか?
1 問題点
①Aが訴訟救助の申立てをした。
➁Aの申立ては却下された。
③Aは却下決定に対する抗告をしたが,抗告状に印紙を貼らず,抗告の手数料を納付しなかった。
④そこで裁判所から,Aに対して,指定された期間(14日)内に抗告の手数料を納付するよう命令(補正命令)が発せられた。
⑤Aは,その期間内に,手数料を納付しなかった。
⑥そこで,裁判所は,抗告状却下命令を発した。
⑦Aは,却下命令書を受領する前に,抗告の手数料を納付した。
⑧その後に却下命令書がAに送達された。
この場合,手数料不納付の瑕疵は治癒され,抗告状却下命令は無効になるか?
答えは,下記の判例のとおり,抗告却下命令は無効になります。
2 判例
最高裁判所第一小法廷平成27年12月17日決定は,
「抗告提起の手数料の納付を命ずる裁判長の補正命令を受けた者が,当該命令において定められた期間内にこれを納付しなかった場合においても,その不納付を理由とする抗告状却下命令が確定する前にこれを納付すれば,その不納付の瑕疵は補正され,抗告状は当初に遡って有効となるものと解される(最高裁昭和31年4月10日第三小法廷判決等)。 記録によれば,抗告人は,訴訟救助却下決定に対する即時抗告の抗告状に所定の印紙を貼付していなかったため,原審裁判長から,抗告提起の手数料を命令送達の日から14日以内に納付することを命ずる補正命令を受けたが,当該命令で定められた期間内に上記手数料を納付しなかったこと,そのため,原審裁判長は,抗告人に対して抗告状却下命令(原命令)を発することとし,その告知のため,原命令の謄本が抗告人に宛てて発送されたが,抗告人は,その送達を受ける前に上記手数料を納付したことが認められる。そして,上記手数料の納付前に原命令が抗告人に告知された事実は記録上認められない。
以上によれば,抗告人は,原命令が確定する前に上記手数料を納付したものであるから,その不納付の瑕疵は補正され,抗告人の上記抗告状は当初に遡って有効となったものであり,これを却下した原命令は失当であることに帰する。論旨は理由があり,原命令は破棄を免れない。」と判示しました。
3 補足意見
なお,この判例には,次のような小池裕裁判官の補足意見が付されています。
私は,本件においては,上記補正命令に係る手数料不納付の瑕疵は補正され,上記抗告状は当初に遡って有効となったものとする法廷意見に賛同するものであるが,事案に鑑み,以下の点について付言しておきたい。
国民は裁判を受ける権利を保障されており,その権利は尊重されるべきものであるが,裁判手続においては,裁判の相手方の利益,手続の適正な進行等をも考慮し、手続の趣旨に沿った権利行使をすることが求められるといえる。訴訟救助の制度は裁判を受ける権利を実質的に保障するため一定の要件の下に手数料等の支払を猶予する制度であるが,訴訟救助の判断を受けるために申立人がすべき行為をすることなく,殊更に派生的な申立て等を繰り返すなどして手続の適正な進行を著しく妨げる場合には,制度や手続の趣旨に反する濫用行為に当たるものとして,申立て等の効力を否定すべき場合もあるものというべきである。