民法雑学 4 公立病院における診療債権、水道料金債権など自治体債権の消滅時効期間
1 事実経過
⑴ 平成23年に,Aは生命保険会社との間に,被保険者をAとし,Bを受取人とする生命保険契約を締結した。
⑵ 平成24年3月14日に,Bについて破産手続開始決定がなされ,Cが破産管財人に就任した。
⑶ 平成24年4月25日に,Aが死亡した。
⑷ 平成24年5月に,Bは,生命保険会社から生命保険金を受領し,費消した。
⑸ 破産管財人から,Bに対し,その返還請求をした。
2 争点
Bが,生命保険会社に対し,Aの死亡を原因とする生命保険金請求権を取得したのは,⑶の時点ですが,破産法34条2項は「破産者が破産手続開始前に生じた原因に基づいて行うことがある将来の請求権は、破産財団に属する。」と規定しているところから,Bが受領した生命保険金は,Bにつき破産手続が開始した時点で,破産財団に属したものではないか?Bは勝手にこれを受領し費消することは許されないのではないか,ということが争点になったものです。
参照:
破産法第34条1項
破産者が破産手続開始の時において有する一切の財産(日本国内にあるかどうかを問わない。)は、破産財団とする。
同2項
破産者が破産手続開始前に生じた原因に基づいて行うことがある将来の請求権は、破産財団に属する。
3 判例
最高裁判所第一小法廷平成28年4月28日判決は,「第三者のためにする生命保険契約の死亡保険金受取人は,当該契約の成立により,当該契約で定める期間内に被保険者が死亡することを停止条件とする死亡保険金請求権を取得するものと解されるところ(最高裁昭和40年2月2日第三小法廷判決参照),この請求権は,被保険者の死亡前であっても,上記死亡保険金受取人において処分したり,その一般債権者において差押えをしたりすることが可能であると解され,一定の財産的価値を有することは否定できないものである。したがって,破産手続開始前に成立した第三者のためにする生命保険契約に基づき破産者である死亡保険金受取人が有する死亡保険金請求権は,破産法34条2項にいう「破産者が破産手続開始前に生じた原因に基づいて行うことがある将来の請求権」に該当するものとして,上記死亡保険金受取人の破産財団に属すると解するのが相当である。」と判示しました。
3 弁護士に対する警鐘
なお,この事件では,Bが生命保険会社から保険金を受領し費消したことが違法とされたのですが,これにはBの代理人弁護士が助言していたことから,その弁護士にも損害賠償請求が認められています。
弁護士の法律判断のミスは,損害賠償義務が生ずるということです。