金融機関に対する取引履歴の開示請求を認めた判例の全文
1 葬儀費用の範囲
一般に,葬儀費用とは,狭義の葬式である①追悼儀式である通夜,告別式の費用,➁これらに参列した人の飲食代,③遺骸の火葬及び④納骨代は含まれるが,墓地の購入代金,葬儀後の見舞客の接待費用等は含まれないところまでは,争いはありません。
初七日や四十九日の法要にかかる費用については,相続人間で争いがあると,葬儀費用に含めないことになっています。
2 葬儀費用の負担者
最近は,被相続人が決めておれば,その者。被相続人が葬儀費用の負担者を決めておらず,相続人間に争いが生じた場合は,大別して,①喪主が負担する。➁相続人が負担する。遺産から支払う。④慣習や条理から負担者を決める。⑤香典の額が葬儀費用が多い場合は,喪主,香典の方が少ない場合は,葬儀を全相続人がしているとき(相続人負担)と,喪主が葬儀を取り仕切っているとき(喪主負担)に分けて考える,⑥社会的地位や遺産の内容に比して相当と認められる程度を越えている場合は,超えない分は相続人が,超えた分は喪主が支払うなど諸説に分かれています。
一概に喪主負担とも相続人負担とも決めているわけではありません(判例タイムズ№1137「遺産分割事件処理の実状と課題」(東京家庭裁判所家事第5部編著)。
3 遺産分割では決められない
葬儀費用の負担者は,遺産分割の審判の対象にはなりません。
葬儀費用は遺産ではないからです。
その負担者や負担額に争いが生じた場合は,相続人間で,訴訟で解決することになりますが,相続人全員が合意し,遺産分割協議書又は遺産分割調停調書に書かれれば,有効です。