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離婚 養育費の一括払い請求

菊池捷男

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テーマ:離婚

Q 私は夫と離婚をし,0才の子を私が養育することになりましたが,夫には現在資産がありますものの,夫の性格上,いつ職を失うか分からない状況にあります。
そこで,
⑴ 子が20才になるまでの養育費を一括して請求したいのですが,できますか?
⑵ できるとした場合,中間利息は引かれますか?
⑶ また,税金はどうなりますか?

A 
⑴について,
東京高裁昭和31年6月26日決定は, 「元来未成熟の子に対する養育費は、その子を監護、教育してゆくのに必要とするものであるから、毎月その月分を支給するのが通常の在り方であつて、これを一回にまとめて支給したからといつてその間における扶養義務者の扶養義務が終局的に打切となるものでもなく、また遠い将来にわたる養育費を現在において予測計算することも甚だしく困難であるから、余程の事情がない限りこれを一度に支払うことを命ずべきでない。」と判示していますので,余程の事情がある場合(具体的には裁判例がないため分かりません。)に限って一括払いの請求ができる,といえますが,夫の了解が得られないと,事実上一括払いの請求は困難だと思われます。

⑵について,
 同決定は,「仮りに一度に支払うべきものとしても、その計算方法はホフマン式により中間利息を控除すべきで、抗告人の主張するように、単に一ケ月に要する費用をその養育年数に乗じて計算すべきでない。」と判示していますので,一括請求ができる場合であっても,現行法の下では年5%の中間利息が控除されます。
具体的には,夫に,0才の子の20才まで月5万円の養育費の支払義務があるとした場合でいいますと,中間利息を控除しない計算ですと,5万円×12か月×20年間=1200万円になるところ,ホフマン式計算方法によって中間利息(年5%)を引くと,816万9660円になります。

⑶税金について,
相続税法21条の3第1項2号は「扶養義務者相互間において生活費又は教育費に充てるためにした贈与により取得した財産のうち,通常必要と認められるもの」は非課税になると定めています。
 しかしながら,夫から養育費を一括で数百万円も支払ってもらった場合には、「通常必要と認められる」範囲を超えており,贈与税が課税されるおそれがあります。
ただ,国税庁の個別通達(昭和57年6月30日直審5-5)では,以下の3つの要件を満たした場合には,贈与税の課税を行わないものとして取り扱うこととしています。
① 養育費を子名義の口座に振り込むこと
② 振込後,それを管理する者(妻)は、信託銀行との間で、子を委託者兼受益者とし、信託銀行から、毎月、子に対して一定額を支払うという均等割給付金の受給を内容とする金銭信託契約を結ぶこと、しかも、管理者(妻)が上記契約を解除する場合には、養育費の支払者(夫)の同意を必要とする旨の特約も定めること
③ ①②を調停調書にすること

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菊池捷男
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菊池捷男(弁護士)

弁護士法人菊池綜合法律事務所

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