改正法の下では、特別損害の範囲が変わる 主観から客観へ
【コメント】
民法563条から民法567条まで,全文,全く内容の異なる規定になった。
(買主の代金減額請求権)
第563条 前条第1項本文に規定する場合において、買主が相当の期間を定めて履行の追完の催告をし、その期間内に履行の追完がないときは、買主は、その不適合の程度に応じて代金の減額を請求することができる。
2 前項の規定にかかわらず、次に掲げる場合には、買主は、同項の催告をすることなく、直ちに代金の減額を請求することができる。
一 履行の追完が不能であるとき。
二 売主が履行の追完を拒絶する意思を明確に表示したとき。
三 契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、売主が履行の追完をしないでその時期を経過したとき。
四 前三号に掲げる場合のほか、買主が前項の催告をしても履行の追完を受ける見込みがないことが明らかであるとき。
3 第一項の不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは、買主は、前二項の規定による代金の減額の請求をすることができない。
【コメント】
代金減額請求権を認めたことが画期的。この規定は,履行の追完催告が前提になるが,例外も認められている。
(買主の損害賠償請求及び解除権の行使)
第564条 前2条の規定は、第415条の規定による損害賠償の請求並びに第541条及び第542条の規定による解除権の行使を妨げない。
【コメント】
現行法の下では諸説あったところを,売主が契約の趣旨に適合しない物を給付しないことが,債務不履行とされ,その場合は債務不履行の一般原則が適用されることが明らかにされた。
(移転した権利が契約の内容に適合しない場合における売主の担保責任)
第565条 前3条の規定は、売主が買主に移転した権利が契約の内容に適合しないものである場合(権利の一部が他人に属する場合においてその権利の一部を移転しないときを含む。)について準用する。
【コメント】
物ではなく,権利又は権利の一部を売買の対象とした場合も,物と同様の規律に服させる規定である。この場合も「契約の内容に適合しないものである場合」は,買主の追完請求権,代金減額請求権,損害賠償請求権,それに解除権が認められることにあるが,売買の対象が権利であるだけに,商品等の物とは異なる,特定の困難性が避けられない。これからの契約実務では,「契約の内容」の明確さが要求されることになるであろう。