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利用変われば,税変わる

菊池捷男

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テーマ:諺にして学ぶ法 

 ある地主さんの話だ。
借地人から「今ある居住用建物を壊して,賃貸用ビルに建て替えたい。承知していただけないか。むろん,地代の値上げには応ずるよ。」と申し入れられて,喜んだ。しかし,表面は,難しい顔をもっと難しくして,交渉して,交渉して,地代の月額をいっぺんに2倍にしてもらったものだ。
それからこの地主さんの顔は,恵比寿様の顔のようになった。
ところがである。その後,そう二,三年位してからか。この地主さん,市役所から送られてきた固定資産税の納税通知書を見て,顔が真っ青になり,真っ赤になり,真っ黄色になった。いや,信号機ではないので,黄色はありえない。しかし,真っ青になって,体ががくがく震えることになった。その理由は,固定資産税の大増税だ。

 地方税法という法律がある。その第349条の3には,人の居住の用に供する家屋の敷地の用に供されている土地(住宅用地)に対して課する固定資産税の課税標準額は①200平方メートル以下の部分は本来の課税標準額の1/6,➁それを超える部分は1/3にされることになっている。要は,住宅用地として使われておれば,基準の1/6や1/3ですむ固定資産税が,賃貸用ビルの敷地になると元に戻され,それまでの3倍から6倍にも大幅に増額になるということだ。
 この地主さん,地代収入は2倍にもなり,顔は恵比寿様になったが,固定資産税の納税額も大幅増になり,赤鬼,青鬼になったということだ。
 

 ここから学ぶことがある。
 借地にせよ,借家にせよ,地代や家賃の額を決める場合は,公租公課(固定資産税と都市計画税のことだ)と儲けの部分を分け,儲けの部分は物価スライド式で増減し,公租公課はそのまま借地人や借家人へ転嫁できるようにしておくことだ。この場合は,税の変動があっても今回のようなリスクは回避できることになる。不動産の賃貸を業とする会社の中には,このような地代,家賃の決め方をしているところがある。転ばぬ先の杖の一つである。

 実は,この制度,つまり居住用建物の敷地にかかる固定資産税が,そうでない土地にかかるそれよりも6分の1~3分の1に安くなる制度は,思わぬ弊害を生んでいるのだ。過疎地で,人が住まなくなっただけでなく借り手もいない建物,しかも軒傾き,道路上に倒れるかも知れないほど危険になった建物が,取り壊すと,固定資産税が3倍以上最大で6倍にもなるという現実の前では,壊さない道を選ぶという弊害だ。
この間,テレビで報道されてたよ。

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菊池捷男
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菊池捷男(弁護士)

弁護士法人菊池綜合法律事務所

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