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契約書 ひな形の書き写しは役に立たない

2014年11月5日

テーマ:契約書

コラムカテゴリ:法律関連

Q 当社は,ある複合ビルを経営している会社ですが,今般,ペットショップを経営する会社をテナントとすることにしました。現在の契約書のひな形では,「第25条 テナントの故意又は過失により貸主や来客に損害を与えたときは,テナントは被害者に対し損害賠償をすることとする。」という条項がありますが,これだけで大丈夫でしょうか?

A 
1,ひな形にかかれた契約条項は,役に立たないことが多い
 質問の中に書かれたひな形の条文は,書く意味のない条文です。理由は,その条文がなくとも,「テナントの故意又は過失により貸主や来客に損害を与えたときは,テナントは被害者に対し損害賠償をしなければならない」からです(民法709条及び民法715条)。
しかも,このひな形の条文は,現実に心配になる事態を想定した規定になっていませんので,現実にトラブルが生じたときに,その解釈指針も無く,何の役にも立ちません。
ですから,ここでは,貴社が心配することを,具体的に書くことをお勧めします。

具体的に,とは,もし,貴社に,①ペットショップで動物が来客に危害を与えた場合,逆に,➁来客が動物に危害を与えた場合にまで想定して心配をされるようでしたら,
第25条に2項,3項を追加して,
2項で「ペットが,来客に怪我を負わせた場合は,来客の故意又は重大な過失によらない限り,テナントには,前項の過失があったものとみなすことする。」と書くのです。こう書けば,テナントは,ペットが来客に怪我を負わせた場合,過失が無いと言って責任を逃れることはできません。また,
3項で「来客が動物に怪我を与えた場合,理由のいかんにかかわらず,貸主にはテナントに対し何らの責めを負わないこととする。ただし,貸主に故意又は重大な過失がある場合は,この限りではない。」と書けば,来店客がペットを怪我させた場合,ペットショップは,あなたの会社の従業員が故意にするか,故意にしたと同視できる場合以外は,あなたの会社の責任を問うことは事実上全くできないことになります。この3項を書き入れない場合は,テナントから,あなたの会社にも管理責任があるなどと言われトラブルが起こる可能性もあるでしょう。

なお,追加の2項と3項は,ペットショップとしても,いわば当然の責任というべきものとして,容易に認めてくれると思います。
2項,3項は,そういう内容だからです。

契約書の個々の条文は,実状に合わせて作るべきです。

この記事を書いたプロ

菊池捷男

法律相談で悩み解決に導くプロ

菊池捷男(弁護士法人菊池綜合法律事務所)

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