コラム
民法雑学 土地に対する所有権の誕生
2014年11月4日 公開 / 2016年3月15日更新
Q 土地に対して,個々人の所有権が認められるようになったのは,いつ,どのような経緯からですか?
A
徳川幕藩政治の下では,まだ,法的な意味での,個々人の所有権(物に対する独占・排他的権利)は認められていませんでした。
幕府も,藩そのものに対し,封地の絶対支配権を認めていなかったことは,幕府の意思一つで,改易(領土の没収),移封(領土替え)ができたことから明らかでしょう。
所有権という概念は,明治維新以後に生まれました。
明治6年の地方官会議で,それまでの年貢(物納)制度を廃して,地租(金納)制度を採用することにし,そのことから,土地所有権を認めることになったとされています。
この新しい政策実現のための作業を「地租改正作業」といいますが,この作業で,全国の宅地,耕地,山林が調査・測量(これらを「地押丈量」といいます。)され,それまでに作成されていた検地帳などとの照合もされて,所有者が認定されていっています。
なお,この制度により,所有者になった者は,地租改正条例により地券(「改正地券」)が交付されましたが,これには,地押丈量の結果に基づき,地番,地目,地積・反別,地主の氏名,地価まで書かれたものでした。地価は,いうまでもなく,地租の課税価格になるものです。土地の価格(地価)まで,地券に書かれていたというのは,面白いと思います。現在の登記簿には,地価は書かれていません。地価(固定資産税評価額)の表示は,市町村でなされています。
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