民法と税法 低額譲渡の基準となる「時価の2分の1未満の価額」の射程範囲
Q 今般,私は,立退料200万円を受け取って借家から退去しました。この立退料については,どのような税金がかかるのですか?
A
立退料は,法的には,
①借家権消滅の対価としての性格を有する金額
➁移転費用にあてる金額
③借家から退去することによる損失の補償金としての性格を有する金額
に分けることができますが,その法的性格の違いから,課税関係は,次のようになります。
①の借家権の消滅の対価となる金額は,借家権を売買によって失う売買契約の対価と同様,譲渡収入になります。ただし,借家の場合は,借地の場合と違って,譲渡収入から取得費,譲渡費用を控除した後の譲渡所得は,分離課税の対象にはならず(租税特別措置法31条),総合課税の対象になり,譲渡所得の特別控除額50万円を控除した後の金額が課税価格になります。この場合,借家契約の期間がその譲渡所得が発生する年の1月1日現在で5年を超えるものは,控除後の金額の2分の1が課税所得になります(所得税法33条3項2号・22条2項)。
➁の移転費用にあてる金額は,必要経費になり,課税所得にはなりません(所得税法34条2項括弧書)。
③の損失の補償金は,一時所得になり(所得税法基本通達34―1(7),一時所得の特別控除額50万円を控除した後の2分の1が課税所得になります。