弁護士と格言 口論乙駁は,コンセンサスを求める場にふさわしからず
英文では,The law helps those who help themselves.と書かれるドイツの格言です。
似た言葉に,「天は自ら助くる者を助く。」という言葉があります。これは,19世紀のイギリス人サミュエル・スマイルズ(Samuel Smiles)の「自助論」の序文に書かれた言葉です。「自助論」は,明治初期,中村正直の翻訳により「西国立志編」として日本に紹介され、その思想は近代日本の基礎を作る上で大きな影響を与えた,とされています。
法に守られた国民の権利も,自ら,その助けを求める努力をしなければ,絵に描いた餅でしかなく,自助の精神は,法の世界でも求められるのです。
法の助けを求めるということは,たんにその意思を表示すればよいというのではなく,主張を尽くし,立証を尽くすなど,懸命の努力をしなければならないのです。それが十分でないときは,勝てる事件に負け,守れる権利を守ることができない,という結果を招くことになるのです。
自ら,懸命に,法に向かって,裁判所に向かって,権利を主張し,立証を尽くしたとき,勝利の女神がほほえみ,あなたの権利が,守られ,実現するのです。
まことに,法は,自ら助くる者を,助けるのです。
弁護士は,依頼人の代理人になって,いささかも,緩むことなく,主張,立証を尽くさねばなりません。
そこに懈怠があれば,依頼人に,法の助けを得させることができないのですから,責任は,極めて大きいものになります。