間違えやすい法令用語 25 以前・前・以後・後
1,法令用語という言葉の意味
法令(ほうれい)とは、国会が制定する法律及び国の行政機関が制定する命令(内閣が作る政令、各省大臣が作る省令)のことですが、地方自治体が作る条例や最高裁判所が作る規則を含めていう場合もあります。
用語とは、言葉、熟語のことです。ですから、法令用語とは、法令の条文上に使われている言葉の意味になります。
2,個々の法令用語の意味
個々の法令用語の意味は、通説・判例による解釈という作業で決まります。解釈とは、法令用語の意味付けのことです。
通説とは、ほとんどの学説によって支持されている解釈をいいます。
判例とは、最高裁判所の解釈をいいます。
法令用語は、抽象的な表現になっています。ところが、紛争は具体的です。ですから、具体的な紛争の中で、抽象的な法令用語をどう解釈するのかが争いになる場合があります。そこで、最高裁判所は、当該紛争類型の中で、当該法令用語はどう解釈されるべきかを明確にするのです。この判断が判例と言われます。判例が明確にされると、最高裁判所も下級審の裁判所も、その解釈に拘束され、それに反する解釈はできないことになります。判例はいわば第二の法律といえるでしょう。
ただし、時代の変化に伴い判例が変更される場合もあります。このときは大法廷で言い渡されます。
裁判例とは、最高裁判所以外の裁判所の判断をいいますが、実務上、判例のない紛争類型ではたいへん参考になるのです。
3,講学上の概念
同じ法令用語であっても、同じ意味で使われるとは限りません。
例えば、相続分という法令用語があります。相続分は、法律で定めた相続割合という意味で使われる場合もあれば、遺言者が指定した相続割合の意味で使われる場合、遺産分割のときの取得額の意味で使われる場合等がありますが、法令用語は相続分だけしかありません。
そこで、それぞれの意味に合わせた新たな言葉を造る必要が生じます。先ほどの相続分の意味の順でいいますと、法定相続分、指定相続分、具体的相続分等という言葉になるのです。
このような言葉は、講学上の概念あるいは講学上の用語と言われます。
講学上の概念は、学問的な約束ごととして意味内容を明確にして造られた言葉ですので、意味内容は、法令用語以上に明確です。
4,講学上の概念という言葉の意味
講学とは、学問を研究することです。
概念とは、物事の本質を捉えた、内包と外延を持つ言葉です。
ですから、講学上の概念とは、学問的に研究された結果の、意味内容を明確にした言葉のことです。