企業経営と危機管理 7 循環取引
⑴ 内部通報制度の必要性
2001年発覚した雪印食品の牛肉偽装事件では、白昼公然たる偽装行為をしたので、他の従業員から内部通報がなされ、本社から監査には来ましたが、この時は事件は発覚しませんでした(事件の判明は犯行場所に利用された倉庫業者からの通報による)が、内部通報と監査は必要であることに変わりはありません。
注:雪印食品の牛肉偽装事件とは、BSE問題を利用した補助金詐欺事件
⑵ 使いやすい制度にする
2008年のGYLの循環取引事件は、千葉営業所長の単独犯のようでしたが、同営業所の従業員は、早くからその違法性に気づいていた模様でした。しかし従業員は、同社の内部通報制度は通報者の所属や氏名を明らかにすることを要求していたため、後難を恐れ通報は諦めたようでした。
また、前述の三井物産データ改ざん事件は内部監査で発覚しましたが、内部通報はなく、内部監査は、データを改ざんした社員に遊興費を取引先に負担させているなど社内の噂が生じたことによるものです。
内部通法制度はあっても、使いやすくないと意味はないのです。
注:
・GYL社の循環取引事件とは、子会社の営業所元所長が循環取引をし約75億円回収不能になった事件
三井物産子会社実験データの改ざん事件とは、浄化効果のない装置を販売した3名が逮捕された詐欺事件
⑶ 内部通報制度の中味
① 通報者の保護を中心にした規定を作ること(秘密保持システムの「見える化」)
② 匿名での通報を認め、通報者の秘密保持に努めること
③ 法律事務所など社外の信頼できる機関に通報窓口を設けること
④ 内部通報による監査を実施するときは、不正を指摘された部署以外の部署も同時に調査(ダミー調査)して、通報者の存在に気づかせないようにすること
⑤ 通報者の範囲を取引先などにも拡げること(雪印食品の牛肉偽装事件の発覚は取引先の倉庫業者からの通報による)
⑥ 通報時間を、勤務時間外にも設けること(午前7時から9時までor午後6時から8時までなど)
⑦ 通報者に一切不利益を課さないことを内外に公表すること
⑧ 通報を受けたときは、監査専門の監査部が独立した監査をする組織にする。
これも、常に、PDCAサイクルに乗せて深化・発展させていくこと
注:
雪印食品の牛肉偽装事件とは、ESC問題を利用した補助金詐欺事件